文中のL-が無いシトルリンもすべてL-シトルリンのことです.
ブドウ・レスベラトロールと
L-シトルリンのコラボレーション
1. 一酸化窒素(NO)と血管平滑筋の弛緩
(シトルリンとブドウ・レスベラトロールの役割)
体内に推定10万㎞もの長さで張り巡らされる血管を若々しく、しなやかにして
血流を増大する最大の重要物質は一酸化窒素(NO)です。
一酸化窒素は血管平滑筋を弛緩させるシグナル(情報)伝達物質の
サイクリック・ジーエムピー(cGMP:環状グアノシン一燐酸)を活性化させることにより
動脈硬化を防ぎ、心臓血管病や腎臓疾患、EDの予防、治療に主要な役割を果たします。
一酸化窒素(NO)を化学的に合成する劇薬のニトログリセリンが心筋梗塞など
血管内皮の一酸化窒素合成酵素を活性化させ、血管が梗塞した時に救急薬となるのは
血管弛緩作用があるからです。
この一連の作用機序にL-シトルリンとブドウ・レスベラトロールのコラボレーションが関わります。
ノギボタニカルでは一酸化窒素(nitro oxygen:NO)の合成に関与する
L-シトルリンとブドウ・レスベラトロールの役割解説を
自動車のエンジンに例えています。
シトルリンは燃料(原料)となるガソリンの役割。
一酸化窒素そのものに(いくつかの段階を経て)変換されるアルギニンを
シトルリンが合成します。
ブドウ・レスベラトロールの役割はガソリンエンジンの点火やガソリン、空気の
噴射量を調節するバルブ、センサーなどを起動させる電気。
燃料となるシトルリンに較べて、ブドウ・レスベラトロールの働きは、
電気同様に多様で複雑です。
レスベラトロールは一酸化窒素合成に必須な
一酸化窒素合成酵素(Nitric Oxide Synthase:NOS)の産生を助けます。
2.血管内皮の一酸化窒素合成酵素(eNOS)
一酸化窒素合成酵素(NOS:nitric oxide synthase)はこれまで*血管内皮由来弛緩因子と
呼ばれていました。
ところが血管内皮だけで産生されると思われていた一酸化窒素(NO)は、
あらゆるといっても過言で無いほど体の様々な部分の細胞で作り出されることが解ってきました。
したがって神経系、免疫系など、産生する部分によって合成酵素には
いくつか種類がありますが、血管内皮で作り出される*eNOS(endothelial NOS)と
よばれる酵素が作る一酸化窒素(NO)が心臓血管病や腎臓疾患、ED治療に重要な役割を果たします。
*eNOSのeは血管内皮(endothelium)の頭文字です。
アルギニン前駆体のL-シトルリンや、牛肉赤身などより作られた
天然のアルギニンが血管内皮の一酸化窒素合成酵素(eNOS:endothelial NOS)を
活性化させ、一酸化窒素(NO)を産生します。
血管内皮は血管平滑筋に隣接しますが、ガス状の情報伝達物質である
一酸化窒素(NO)はそれらを構成する細胞間を自由に出入りして、
血管平滑筋弛緩に作用します。
一酸化窒素(NO)は一般的に不足が多いのですが、人為的な過剰産生は心臓血管、腎臓などに
重篤な副作用が報告されています。
人体に必須の重要物質ですが、過ぎたるは及ばざるごとし。
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アルギニンにはいくつかのタイプが解明されていますが、いずれにせよ
合成アルギニンの摂食は慎重にすべきであり、肉類など食品経由か、
自然に必要量のみ体内合成されるシトルリンからの摂取が無難です。
ただし、シトルリンも大きく逸脱した摂取は体内合成に異常が
起こる懸念もありお薦めできません。
(シトルリンの詳細)
ブドウ・レスベラトロールとL-シトルリンのコラボレーション 一酸化窒素合成(NO)とサイクリックジーエムピー(GMP)の産生
3.ブドウ・レスベラトロールの血管内皮細胞の機能強化作用
NO(一酸化窒素)合成に関与するブドウ・レスベラトロールの機能は窒素を作り出すため
に必要な*窒素合成酵素(NOS)の産生を援助する作用。
心臓などの血管内皮は加齢や高脂血、高血糖などにより、酸化した悪玉の低密度リポ蛋白(LDL)が蓄積し、
機能低下、血管がしなやかさを失い硬化します。
血管内皮細胞の機能低下は、ここで作られる窒素合成酵素の産生低下に繋がります。
レスベラトロールには血管内中性脂肪、悪玉の低密度リポ蛋白(LDL)などの酸化を防ぐ作用が知られており、血管内皮を酸化脂質の損傷から守ります。
4.ATPがサイクリック・ジーエムピー(cGMP)産生に関与する
生体エネルギーの産生で最大のものがミトコンドリアでの*ATP(アデノシン三燐酸)の産生ですが
ブドウ・レスベラトロールはミトコンドリア量を増やし、最大限のエネルギー産生を促進します。
エネルギー源となるエーティーピー(ATP:アデノシン三リン酸)とは: 合成コエンザイムQ10(Coenzyme Q10)過剰摂取の危険性
レスベラトロールが増産させるATPは*グアノシン三リン酸(GTP)にも変換する分子です。
このグアノシン三リン酸(GTP)は血管平滑筋に作用して血流を増大させるcGMPの
原資となり、細胞内に存在する酵素 *(SGC)により、環状グアノシン一燐酸を合成します。
環状グアノシン一燐酸はイコール*サイクリック・ジーエムピー(cGMP)。
情報伝達物質(シグナル伝達物質)として血管平滑筋の弛緩を指示し血流を増大させます。
窒素が活躍するのはサイクリック・ジーエムピー(cGMP)を合成する酵素(SGC)の活性化です。
5. 血管平滑筋の弛緩を阻害するホスホジエステラーゼ(PDE)はEDの元凶
このように合成されたサイクリック・ジーエムピー(cGMP)にも、
その濃度調整に働く(阻害する)酵素があります。
*ホスホジエステラーゼ(PDE)とよばれる酵素です。
NO(一酸化窒素)をスムースに供給することで、この酵素(PDE)に調整されない(阻害されない)
濃度のサイクリック・ジーエムピー(cGMP)を合成する必要がある由縁です。
ED治療にはこの酵素(PDE)の働きを阻害する医薬品(バイアグラ、レピトラなど)を
使用する方法と、それに負けないようにcGMPの濃度を増やす二通りの方法があります。
ホスホジエステラーゼ(PDE)には重要な役割もあり、これを医薬品で強制阻害するのは不自然で、
いくつもの副作用が懸念されます。
サイクリック・ジーエムピー(cGMP)の濃度を高める工夫が自然であり、
より安全なのはいうまでもありません。
6.文中用語の英文
*エーティーピー(ATP)(アデノシン三燐酸:adenosine triphosphate)
*ジーティーピー(GTP)(グアノシン三燐酸:guanosine triphosphate)
*サイクリック・ジーエムピー(cGMP)(環状グアノシン一燐酸:guanosine monophosphate )
*可溶性グアニル酸シクラーゼ (SGC):guanyl cyclaseまたはguanylate cyclase)
*一酸化窒素合成酵素(NOS:nitric oxide synthase)
*血管内皮由来弛緩因子 (EDRF:endothelium-derived relaxing factor)
*血管内皮型NO合成酵素(eNOS:endothelial NOS)
*ホスホジエステラーゼ(PDE:Phosphodiesterase)
初版:2013/06/14
改訂版:2016/06/20
改訂版:2018/07/20
改訂版:2018/11/16