2017年1月24日、火曜日朝の第5チャンネル
「羽鳥慎一のモーニングショー」が取り上げたのは
カロリー・リストリクション(Caloric Restriction)
粗食で哺乳動物の寿命が約30%は伸びる(おそらく人類も)と、
アカゲザルでの比較実験*(1/17 /2017:Nature Communications)を紹介しました。
番組ではタンパク質を制限せずに炭水化物などの糖質制限で
50才くらいの女性ならば約2000㌍。
中高年以上ならば1300㌍くらいに、30-40%のカロリー制限をすれば
美容と長寿を得ることが出来るとの解説。
特に目新しくありませんが、人間に近い哺乳動物による比較実験で
カロリー制限長寿説を立証した最新ケースの紹介ということでしょう。
番組では「長寿遺伝子オンのお助け食材」として
カロリー制限と同様な作用機序を持つ赤ブドウ・ワインや
DHA(オメガ3)を推奨していましたが、放送時間内に収めきれなかったであろう
摂食方法や安全性に関する説明を補足しました。
*Caloric restriction improves health and survival of rhesus monkeys
1.カロリー・リストリクションと長寿
カロリー制限(Caloric Restriction)が長寿につながると、
議論が始まったのは1940年ごろ。
戦乱のヨーロッパで食糧不足が顕著になった時代です。
わずか75年が経過したところですが、様々な動物実験で
実証を始めてからはまだ20-25年。
疫学的な説明には最低限でも人間の寿命である100年は必要でしょう。
人類への分子レベルの証明となると予測はできません。
「飢餓は癌(がん)や糖尿病などの原因となる遺伝子変異を抑制し、
長寿遺伝子を活性化する」という切り口は解りやすい説明でした。
いつもながら解説は多数の長寿関連著書や講演で著名なクリニック経営者。
良くまとまっていましたが、解説者はテレビ出演が多く、
健康食品も取り扱っていますから、盲信するか、疑義を持つか、
視聴者の反応は分かれるでしょう。
ただし、商品への誘導や持論の主張はなく、公正に現時点での学問的進展を
伝えていました。
2.長寿遺伝子のスウィッチをオンにするお助け食材」
飢餓に耐える遺伝子とはイコール、誰もが持つ長寿遺伝子群。
飽食環境にある人々は意識してこの遺伝子群を変異させない
生活習慣と食生活が必要な時代です。
カロリー制限は遺伝子変異を抑制するために、癌など重病の発症を
最小限にすると推定されていますが、制御された長寿遺伝子も活性化しなければ
役に立ちません。
番組では長寿遺伝子変異を制御し、活性化する食材を
「長寿遺伝子オンのお助け食材」として推挙していました。
視聴者は断片的に自分なりの理解をしたと思いますが、有用食材ほど
摂食量、摂食法が正しくなければ、役に立たないばかりか
有害食材に転ずる可能性が大きくなります。
ワイドニュース番組の限られた時間では詳細解説は困難だったでしょう。
推奨食材の中からノギボタニカルが取り扱う食材に限って注意点を補足しました。
3.推奨された赤ワイン・レスベラトロール
番組では食材の皮には長寿(遺伝子変異をさせない)の有用成分が
凝縮されており、中でも赤ワインはトップクラスと推奨。
赤ブドウの皮には植物が過酷な環境から身を護る
ファイトアレキシン(phytoalexin)作用をもつポリフェノールの
レスベラトロールが特に豊富だからです。
番組ではレスベラトロールの効能を、癌や2型糖尿病を引き起こす
遺伝子変異の制御という切り口で紹介し、重要疾病の抑止によって長寿を
達成するという解説をしていました。
ヒト細胞内で寿命を司るテロメアの切断を阻止する酵素の機能立証には
まだ時間が必要だからでしょう。
4.レスベラトロール摂食時の注意点
注意点は二つあります。
*赤ブドウには抗酸化物質のアントシアニンが豊富ですが
レスベラトロール含有量は種類や産地で大きく異なり、
全く存在しないものもあります。
温暖化で栽培が難しくなった生産地は害虫や微生物の発生が多くなり
農薬使用の頻度が高くなります。避けるべきでしょう。
赤ブドウならどれでも良いわけではありません。
*選択した赤ブドウに天然のブドウ・レスベラトロールが
豊富ならば過剰摂食をしないこと。
60キロくらいの体重で720mlボトルの半分くらい。
平均的な赤ワイン摂食量を超えないことです。
合成レスベラトロールと異なり天然の赤ブドウに含有するものは
少量で効果が得られます。
有用だからと大量摂取することは逆効果です。
5.焼き魚のオメガ3脂肪酸を推奨
番組では青魚に豊富に含まれるオメガ3脂肪酸が、高齢では2人(女性)から
3人(男性)に1人が発症する癌や、脳卒中、心臓血管病を予防し、
長寿につながると紹介。
オメガ3脂肪酸の豊富な魚の皮下脂肪を焼き魚で食することを推奨。
加熱により皮ごと食べやすくなるからです。
6.焼き魚調理時の注意点
オメガ3脂肪酸は健康に最も重要な成分のひとつといえますが
不飽和脂肪酸と呼ばれる不安定な脂肪酸。
酸化が早く、過酸化脂質となりやすい脂肪酸です。
新鮮でない青魚などが臭くなるのは酸化が原因です。
また揚げ物、焼き物などの200℃を超える高温加熱によって動脈硬化を促進する
トランス脂肪酸が生じます。
焦げた場合はトップクラスの発がん物質(IARCのGroup2A)の
ベンツピレン(ベンゾピレン)類が発生します。*benzpyrene (Benzo[a]pyrene)
生食できない鮮度の鮭(さけ)、サンマ、鯵(あじ)、イワシは
焼き魚で食する人が多いですが、安定温度を保てる調理器具の選定が必要です。
ベンツピレン発生量が多くなるのは肉や魚の炭火焼きと記憶しておいてください。
焼き過ぎて焦げた皮を食することは(絶対に)お薦めできません。
お役所言葉の「直ちに健康に影響はない」は危険と理解すべきです。
青魚は出来る限り生食できる鮮度を選び、お刺身、お寿司や、焦げにくいキャセロール類での
調理にしましょう。仕上がりはともかく、お寿司やお刺身は誰にでもできます。
イワシ類、鯵類、サンマの生食は短時間の酢締めか、お酢をくぐらせる調理がお薦め
青魚を米油、ニンニク、香草、トウガラシ、パン粉でオーブン焼がお薦め
焼く時はアルミホイールで覆って「焦げ」を避けてください.
写真右はアルミなしでの焼成.トウガラシに焦げが出ています。
*その他の補足
ピーナッツも薄皮ごと食することを推奨していましたが
ピーナッツには少量ですがレスベラトロールが含まれています。
ただし国産は中国産の価格に較べ3-5倍。
流通する大部分は油性農薬を使用する中国産。皮食は危険です。
リンゴは農薬(国産ならば水性農薬)を相当量使用します。
皮ごと食するときは十分に洗浄する必要があります。
(ご注意)
番組でも指摘していましたが、カロリー制限は中高年に有効と理解すべき。
成長期、活動期においてはダイエットや肥満防止のために
食事を極端に制限することは危険。
栄養失調は抵抗力を減少させ、癌や糖尿病発症の原因ともなります。
(参照)