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パーキンソン病の脳細胞回復にナイアシンが効果的

医療新時代を開くナイアシン(NAD+ NMN)その2

1. パーキンソン病治療とiPS細胞

7月末(2018年)にパーキンソン病(Parkinson’s disease)で冒された脳神経細胞を
iPS細胞で再生する治療法の治験開始が報道されました。
iPS細胞(人工多能性幹細胞)から神経伝達物質(ドーパミン)を産生する
神経細胞を作り、パーキンソン病患者に移植する計画を推進しているのは
山中伸弥博士グループの高橋淳京都大教授ら。
この度世界初の治験計画にゴーサインがでたそうです。

パーキンソン病は遺伝要因と環境、食生活など外来要因が複雑に絡み合うといわれる難病。
発症、原因のパターンがいろいろあるようですから、脳神経細胞衰弱の本当の根本を発見し、
根から絶たねば全面解決はできないでしょう
根本原因究明には患者由来のiPS細胞を作り、ドーパミン産生ニューロンに分化させ、
病態の再現が理想的。
これにより薬剤の効果・毒性評価を含めて大きな進展が期待できるといわれてきました。
今回はこの困難な患者由来のiPS細胞作成ではなく、着手しやすい他人細胞でiPS細胞を作り、
治験を進めるということだそうです。
iPS細胞が再生医療に役立つには、最低でも数十年の長い月日が(現段階では)必要といわれますから
今回の発表は見切り発車的な印象を受けます・
周辺にせかされる研究者もつらいところですが、長い目で見守り、援助を続けることが
必要です。



2. 損傷した脳神経細胞回復にナイアシン(VB3)が効果的

ナイアシン(VB3)の脂質代謝に関わる機能は永らく病的肥満や脳、心臓血管不全の治療薬として
公式、非公式に使用されてきました。
近年の分子細胞遺伝子学の飛躍的発展により、多くの学者により様々なナイアシン(VB3)の
機能解明が発表されるようになり、脂質代謝ばかりでなくナイアシン(VB3)のミラクルな特徴と
いわれてきた遺伝子修復、神経伝達などの機序詳細も明らかになりつつあります。

ナイアシン(VB3)とそれを前駆体とする*NAD∔、NADPなどは様々な難病を解決する
「今、最もホットな研究ターゲットの一つ」となっています。
手の動きが定まらず、筋肉が硬直し、体の動きが悪くなるのはパーキンソン病に
特徴的な症状ですが、その改善にビタミンB3の効果が臨床ではよく知られています。
しかしながら、パーキンソン病にどのように作用するのか、作用機序の詳細は
明らかではありません。

今年(2018年)の5月にセル誌(the Cell Reports)に発表された信頼できる学術報告に
「*損傷した脳細胞回復にビタミンB3が効果的」と表題されたドイツ人学者の研究があります。
*「Vitamin B3 has a positive effect on damaged nerve cells in Parkinson’s patients」
実験では、パーキンソン病に冒されて遺伝子が損傷した脳神経細胞に、ナイアシン(VB3)が
著効を示しました。

*NAD+とはナイアシン (Niacin:ビタミンB³)を前駆体とした補酵素の略語.
生体が摂取した食事の栄養分をエネルギーに転換する機能を持ちます.
ニコチンアミド・アデニン・2ヌクレオチド(Nicotinamide adenine dinucleotide )
大豆など豆類に多いニコチン酸(Nicotinic acid)と
肉や魚に含まれるニコチンアミド(nicotinamide:NAM)はいずれも水溶性ビタミンの
ナイアシン (Niacin:ビタミンB³)と総称されます。
* NMN:ニコチンアミドモノヌクレオチド(nicotinamide mononucleotide)NAD+中間代謝産物
* NR:ニコチンアミドリボシド(nicotinamide riboside)NAD+中間代謝産物



3. 「有効成分」と呼ぶより、「作用グループ」と命名が実態に近い

セル誌に発表されたのは動物実験レベルですが、最近ではパーキンソン疾患にドーパミン産生促進などの
医薬品ばかりでなく、ナイアシン、NAD+、NMNを投与する医療機関が少なくありません。
疫学的な根拠に基づく使用であり、作用機序の詳細は明らかでない段階ですが
近い将来に人での成果が報告されるでしょう。

あくまでも補酵素であるナイアシン(VB3)の作用機序解明には、ナイアシンや
NAD+、 NMNなどがコラボする共働物質の発見が必要です。
それも1段階なのか、数段階を経るコラボの化学変化を必要としているのか、
はっきりさせねばなりませんが、ナイアシンの作用に関わるのが体内で生成される物質か、
日常的に食材として摂取している物質であろうことは想像に難くありません。

医療新時代を開くナイアシン(NAD+ NMN)その1: ナイアシン(NAD+ NMN)がサーチュインとコラボレーション: 長寿と癌(がん)研究の新たな潮流

医療新時代を開くナイアシン(NAD+ NMN)その1: ナイアシン(NAD+ NMN)がサーチュインとコラボレーション: 長寿と癌(がん)研究の新たな潮流
1. アンチエージングに関わるNAD+, NMNはナイアシン(Niacin:NAM)が前駆体 NAD+とは生体が摂取した食事の栄養分をエネルギーに転換する機能を持つ補酵素の略語。 ニコチンアミド*・アデニン・2ヌクレオチド(Nicotina


4. ナイアシンのサーチュイン活性化

ナイアシンが補酵素として働く共働物質の発見に関しては、先例があります。
現在までに長寿や肥満対策に関与するタンパク質のサーチュインがナイアシンにより
活性化することが動物実験レベルで解っています。
ナイアシンが補酵素としてサーチュインを活性化させるのはどのような物質との
コラボレーションでしょうか?
様々な物質が考えられますが、実験で明らかになっているのはブドウレスベラトロールの
スチルベノイドとプテロスチルベンです。
スチルべノイド類は不妊防止や抗がんに必須なミトコンドリアの活性化を促しますが
パーキンソン病の原因もミトコンドリアの不活性化であることを実験で突き止めたのが
上記、セル誌の論文を発表した南ドイツの*テュービンゲン(チュービンゲン)大学、
ハーティー脳医学研究所のグループです。

*チュービンゲン大学(Universitaet Tübingen
*ハーティー(ヘルティエ)脳医学研究所(Hertie Institute for Clinical Brain Research)
1477年創立のチュービンゲン大学(テュービンゲン:University of Tuebingen)が立地する
テュービンゲン(Tübingen)は、ドイツ南部バーデン=ヴュルテンベルク州にある
テュービンゲン郡の郡庁所在地。
人口 88,358人(2010年12月31日現在)(ウィキ)



5. ミトコンドリアの不活性化がパーキンソン病の原因か.

デレイディ博士(Dr. Michela Deleidi)らの発見
パーキンソン病はドイツに約220,000人の発症者がいます。
加齢とともに発症しやすくなりますが、原因は脳神経細胞の減少です。
デレイディ博士らはナイアシン(VB3:nicotinamide riboside)が代謝不全に陥っている
細胞に作用して細胞死を防ぐ効果があることを動物実験で確認したと発表しました。
ナイアシンの作用機序はミトコンドリアの活性化。
しかしながら、パーキンソン病の症状が進展するメカニズム詳細はいまだに解っていません。
解っているのは神経細胞のドーパミンの増加レベルが*中脳の黒質(substantia nigra region)で低下し、
死滅して行くこと。
*substantia nigra region:ドーパミン産生神経細胞を含む中脳の黒質

最近になり、デレイディ博士らは、その死滅する細胞のミトコンドリアが損傷していることを発見しました。
ミトコンドリアはエネルギー産生を担当し、細胞のミニ・エネルギー工場としてその産生に働き、その機能に欠陥が生じれば細胞は死滅します。
このことがパーキンソン病を発症させるのか、パーキンソン病の副作用なのかは
現段階では不明です。
研究者らは未明なパーキンソン病発症のメカニズム解明のために国際的な協力者により
多数の患者の皮膚のサンプルを集め、それより幹細胞を作り、神経細胞に分化させました。
この細胞はパーキンソン病罹病リスクの最も高い*GBA geneとして知られる遺伝子の欠陥を持っており、
実際に神経細胞のミトコンドリアはエネルギー代謝機能が壊れていました。
博士らはその後GBA geneに的を絞り、ハエによる実験を開始しましましたが
これまでにナイアシンの投与により細胞中のナイアシン派生体NAD+の集積が高まること、
NAD+による新しいミトコンドリアの形成により脳細胞のエネルギー容量が著しく改善され、
エネルギー産生が高まったことを確認しています。
(GBA geneに関する解説は次回以降に続きます)

purple cells

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