加工肉の亜硝酸ナトリウムはトップクラスの発がん物質(WHO:IARC):
加工肉、食用肉の発がん性
2015年は世界保健機構(WHO)の傘下組織である国際がん研究機関(IARC)が
1965年にがん研究と、その広報を始めて50年の区切り。
半世紀の節目記念なのでしょうか、10月中旬にIARCは
「加工肉の発がん性を確認しリスク・リストのトップグループに分類した」
と報告し、世界の食品業界、流通業界に強いインパクトをあたえています。
1. 加工肉、食肉の発がん性に関する国際がん研究機関(IARC)の警告
世界保健機関(WHO)の
国際がん研究機関(IARC:International Agency for Research on Cancer)が
指摘したのはハム、ソーセージ、ベーコン、サラミ、コーンビーフなどの加工肉と
牛肉、豚肉、羊肉の発がん性。
年間約3万5千人が死亡しているといわれます。
IARCの結論は腸関連がん(colorectal cancer: bowel cancer) 発がんの危険性を指摘した
800本以上といわれる論文、文献、疫学的調査などを専門の22人の研究者たちが
分析、精査(*メタアナリシス)したものに基づいています。
その結果ですから安易に警告しているわけではありません。
*メタアナリシス(meta-analysis)は学術会議、専門誌などで発表されている各種の調査、
研究論文をテーマごとに精査して研究の方向性、確度などを確認する手法です。
研究者にはメタ解析、メタ分析とも呼ばれています。
IARCには発がんリスクの危険度を5段階に分類した リスト(IARC Monographs Programme)が
ありますが、加工肉は最も危険なグループ1(発がん性あり:carcinogenic to humans)。
毎日50gを食していると癌発症リスクが約18%*は高くなるとの結論。
*加工肉愛好者100人にたいし発症者が6人と仮定すると7人になるだろうということです.
EU諸国は世界で最もバラエティーがある加工肉(生ハム、サラミ、ソーセージ)の大生産地.
トップグループにリストアップされたIARCの発がん性リスク警告はダメージが大きいでしょう.
加工肉と生肉類は欧米の食生活に欠かせない主要食材。
過食の危険性はかねてより疫学的調査や多数の論文が指摘していましたが、
IARCは世界が認める癌研究の本丸だけに、今回ばかりは関連業界とマスコミが大騒ぎ。
肉類は長寿の元ともなる重要健康食品ですから必須食材ともいえます。
欧米の当面の対処法は「摂食量を大幅に減らす」「添加物を排除する」ですが、
発がんの危険性は残ります。
癌細胞遺伝子発現の予防になる野菜と果物のポリフェノールが対処法の一つかもしれません。
毎年無数に発表される学術論文。
それを精査し、検討する学問分野がありますが
医学の分野でも発表された実験、調査などの論文を精査し、生体内作用機序が
未解明の段階で、疫学的な大きな流れを把握する学問(*メタアナリシス)があります。
他人の論文を誹謗する学者や企業と癒着する御用学者が消費者を混乱させますが、
質の高い健康情報には雑音を排して真摯に耳を傾ける姿勢が身を護ります。
最近の日本は肉食がブームといわれますが、ある程度上質の国産テンダーロイン(写真)、
プライムリブ、肩ロースはキロ15,000円から20,000円が最も安価な部類.
高すぎるために日本には過食の人が少ないのが幸いです.
牛肉などの赤身肉は次段階のグループ2a(発がんの恐れあり:probably carcinogenic)。
腸がん(bowel cancer)の約21%が赤身肉類との結論。
*米国人の肉愛好者は一食に400gから600gくらいのステーキを食べる人が珍しくありませんから
少しでも摂食量を減らしたら良いというのがWHOのアドバイスです。
「天然トランス脂肪酸(共役リノール酸)は心臓疾患に悪影響」
2. 亜硝酸ナトリウム(亜硝酸塩:Sodium Nitrite):ケン幸田のカナダ便り
国際がん研究機関が発がん物質として最も危険なグループ1に分類した加工肉。
加工食品の危険な添加物に関しては2009年にケン幸田さんが欧米の話題を紹介しています。
ケン幸田さんはノギボタニカルに寄稿していただいているカナダ在住邦人(約40年滞在後帰国)。
大規模工業化した食品産業と共に増え続ける食品添加物に一石を投じたものです。
「加工食品の危険な薬品群(ケン幸田:2009/12/18)」
a. ペーハー調整剤と次亜鉛素酸ソーダ
食品加工上、ペーハー調整剤に使われているのは、
クエン酸・クエン酸ナトリウム・炭酸ナトリウム・リン酸・リン酸塩といった物質で、
いずれもが工業的に作られた薬品です。
他にも防腐剤、殺菌剤などの悪作用(多くのパックサラダやカット野菜は、
次亜鉛素酸ソーダで殺菌)で特に注目されるのは、
腸内菌叢(腸内フローラ:無数の細菌が群がって存在することで作り出される酵素が、
腸内で食品を分解し、エネルギー源に変えている)をバラバラにしてしまい、
その大切な働きに支障を来たすということです。
他にもご存知のような各種農薬の問題、養殖の魚や家畜に大量に使われる
抗生物質やホルモン剤なども、人体に様々な悪影響を与えています。
b. 亜硝酸ナトリウム(亜硝酸塩)とアミノ酸の結合
単体での安全性で認可される食品添加物の危険性
ハム・ソーセージに多用される亜硝酸ナトリウム(Sodium Nitrite)は、
食材の色をきれいに見せる為の発色剤(保存剤兼用)ですが、肉魚などのタンパク質と結びついて
胃酸と混じると、強力な発ガン物質を発現させ、また合成着色料(タール色素)は
脳の前頭葉を壊すなど、医科学的にも証明されています。
これら食品添加物は、約千五百種もあって、それぞれ「単体での安全性だけ」が
確認されたというだけで、使用が認可されているようですが、
それらが複合的に交じり合って食されたり、あるいは人体に入り込み、
組織や細胞に触れ、消化液の作用でどの様な化学作用を起すのか、までは
何ら確かめられて居ないのが現状のようです。
しかも、グローバル時代とあって、食品も、添加物(薬品)も各国別の規制の有無や
純度など品質の優劣などに大きな差異がある為に、様々な国際間の問題が
増大していることは、日頃のニュースでも御馴染みの通りです。
ただ、こうした問題の背景には、「安くて色がきれいでないと買わない」といった
消費者側の自覚不足も問われるべきで、生産者側、輸入業者などを
一方的に責める前に、一生活者として、正しい食品、自分の健康を守り支えてくれる
食品を選んで買って(あるいはそうした食材を調理して)食べることこそ、
優先させるべきだと思う次第です。
c. アクリルアミドと過酸化脂質
“過酸化脂質”は広義の活性酸素で、これを摂り込むと、
体内では大変な毒性を発揮するので、それを食いとめようとして、
抗酸化物質を総動員せざるを得なくなり、本来の働き(より悪性の狭義の
活性酸素の害を除去したり、炎症を緩和するなど)がお留守になってしまい、
結果的に健康レベルを低下させ、疾病に陥ってしまう危険性があります。
「老化、癌を招く油脂過剰症は過酸化脂質(ペルオキシド)の過剰摂取」
パリッと仕上げるため、より高温で揚げた食品(ポテトチップス・フライドポテトや揚げ物)は
蛋白質が変性している場合が多いため、より危険性が高まっているようです。
なお、オーブン料理や蒸し焼きのベイクドポテト、グラタンなどは高温の油と
ジャガイモが直で接しない調理法.有害物質(アクリルアミド)の発生度は低く、
人体には安全だとされています」
バーベキューの炭化部分も発がんの危険性が指摘されています.除去しましょう.
3. 自家製少量生産食品と工業化された大量生産食品は異質
昨年(2014年)12月にブレイクした台湾の地溝油スキャンダル。
アイスクリームやチョコレートをミルキーな滑らかさにする添加物が
油脂であることを知らなかった人が多かったようです。
なめらか、プリプリ、濃い香り、きれいな色、シャキシャキ、サクサクなど加工食品を
新鮮な実物に近づけるために様々な化学合成添加物を使用するのが現代の
工場生産食品。
工業化によって量産され、スーパー、商社経由で全国規模ばかりか海外にまで広域販売。
添加物を加えた加工食品を消費者が求め、選択する限り、増え続けます。
加工食品に必須ともなっている旨味アミノ酸(合成)や保存用を加えると
現代の食はまさに化学合成添加物のオンパレード。
「加工食品の地溝油(黒心油)汚染は底なし」
水銀、ヒ素、ダイオキシン、トランス脂肪酸なども健康被害が世界的レベルで永年議論され
最終的に警告が出されています。
いつもながら「日本は食環境や条件が異なる*」「死亡事故は他の原因ではないか」
「分子レベルの作用機序が黒という証拠があるのか」「安全な食品など元々殆どないではないか」
「代替品を得てもそれにも毒性があるのがほとんど」
「厚労省の認可基準に従い適切に使用しています」「食中毒で死亡するより良いではないか」
と詭弁を弄して(きべんをろうして)灰色を回避しようとする関連企業。
それを援護する御用学者。
ネットで一般を装い援護する関係企業のやらせ社員。
拝金主義の企業利益追求が情報に疎い(うとい)消費者に健康被害を与えないよう
行政でコントロールしてもらいたいものです。
水銀、ダイオキシン、ヒ素などは神経を冒す化学物質。
発症までに30年、50年とかかることがありますが「遅効性毒物は安全」とは言えません。
認知症の原因物質として解明される時が来るだろうことは多くが予測しています。
(*地域性、民族性、性別、年齢、生活習慣、食習慣、生活様式などは、過去に較べ非常に
多様化または同一化されているために統計の変動ファクターとしての意味は薄れています)
https://nogibota.com/archives/2330
https://nogibota.com/archives/247
https://nogibota.com/archives/7335
5. 甲殻類の黒変化を防ぐ亜硫酸水素ナトリウム(sodium hydrogen sulfite)
バナメイ、アマエビ、カニなど甲殻類は高価でも「活き」で食べるべき。
理由は鮮度を保ち、アミノ酸の変化による黒変化を防ぐために
薬品(亜硫酸水素ナトリウム、亜塩素酸ナトリウムなど)が使用されるからです。
亜硫酸水素ナトリウムは漂白剤、保存剤、還元剤、酸化防止剤などとして
加工食品やワイン、ジュース、化粧品、洗剤などに広く使用されていますから、
加工食品摂食割合の多い生活習慣によっては総量が過大になる
恐れがあります。
化粧品などの経皮による毒性は未知のようですが、経口で有害なのは
議論の余地がありません。
亜硫酸水素ナトリウム類は皮膚、呼吸器に有害性を示す化学合成物として知られ
アレルギー、喘息のある方は特に避けるべき物質。
「アジアのエビ食文化(2):バナメイエビとシバエビの相違は一目瞭然」
第6項:プリプリ感保持の二酸化硫黄(sulfur dioxide)、黒変化防止の亜硫酸水素ナトリウム
アジアのエビ食文化(2):バナメイエビとシバエビの相違は一目瞭然
6. 甲殻類筋肉の弾力を保つ二酸化硫黄(sulfur dioxide)
経口の食品添加物としては化学反応をして筋肉中に残留する
二酸化硫黄( sulfur dioxide)の有害性が高いと先進国では指摘されています。
それにもかかわらず水産加工産業が盛んな日本としては使用量を限定して
許可せざるを得ないのが実情のようです。
「なめらか、プリプリ、濃い香り、きれいな色
エビ、カニが特に問題となるのは保存料としてより、プリプリ感を出すために
エビの筋肉中に規制量以上の二酸化硫黄(sulfur dioxide)を残留させる業者が
多いからです。
薬品はエビカニの筋肉内に残留し、あたかも新鮮であるかのような
プリプリ感を得ることも出来ますので冷凍で流通するエビのほとんどが
添加物として使用します。
養殖エビの場合は養殖池でフォルムアルデヒト(抗菌剤)を使用していると
亜硫酸水素ナトリウム量が倍増する危険があるという報告もあります。
薬品を使用するのは冷凍食品ばかりではありません。
甘海老の一種として流通する国産のホッカイアカエビは寿司だねとして人気があり、
多い年で4,600トン以上が水揚げされますが、黒変を防止し鮮度を保つために
冷凍していないものも亜硫酸水素ナトリウムや化学合成されたアスコルビン酸を
使用しているようです。
アスコルビン酸は化学合成されたもので安全性に関して議論があります。
様々な物質で構成されて安全性を持つ天然のビタミンCとは異なり
肝臓障害のある方などに有害性を持つという論文が報告されています。
*ロハスケ「食在亜細亜」より抜粋
初版:2009年12月
改訂版:2015年11月
改訂版:2018年10月