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世界の健康と食の安全ニュース

偽装列島を健康に生き抜く知恵(5) 整腸剤新薬キノホルム薬害の教訓

(まえがき)
@医薬品に安全なものはありません。

医薬品といえば消費者が安心、安全と認知してくれていることを前提とした
宣伝コピーが溢れるようになっています。
大企業の医薬品ならば安全性、効能共に間違いがないと盲信する国民性を
見透かされているからです。
医薬品とはどのようなものか、どのような時に、どのように、どのくらい使用すべきかを学び
最終的には自己責任で判断しなければなりません。
製薬会社、医師の責任範囲は限られています。

@著名研究者といえどもその説を盲信しないこと。
医学、医療論文の実験データや写真には改造、ねつ造が珍しくありません。
スタップ細胞の偽造のような若い研究者によるものばかりでなく
高名な博士らによる捏造論文が著名科学誌に掲載されることも少なくありません。

@製薬会社は民間の営利企業ということを忘れてはいけません。
製薬会社をサポートした御用学者による「初めに結果ありき」の効能実験論文が
珍しくありません。
有利な効能は誇大に、不利な重大副作用は隠ぺい。歴史が証明しています。

@火の無いところに煙は立ちません
「疑義をもたれた医薬品は明確な科学的な証明があるまで回収を待つべきではなく、
その時点で疑わしきは直ちに回収すべき」

サリドマイドの有害性を疫学的に証明した「レンツ博士の警告」です。

偽装列島を健康に生き抜く知恵(4) 米国がサリドマイド上陸を阻止できたのは FDAのフランシス・ケルシー薬理学博士の英断

https://nogibota.com/archives/1893
疑義が報告された時に薬害を回避するには製造会社の言い訳を聞く必要がありません。
また病院や診療所の医療担当医師が患者ファーストとはかぎりません。
「科学的証明」とは食品会社、医薬品会社の錦の御旗。
分子レベルでの有害性証明は時間を必要とし、簡単ではないからです。
サンプルの少ない疫学的調査であっても有害説には耳を傾ける必要があります。

 

1. キノホルム(キノフォルム:chinoform)とは

キノホルムはスイスのチバ・ガイギー
(*ノバルティス:Novartis International AG)が
1889年にコールタールに含まれる有毒物質キノリン(quinoline)が
殺菌効果を持つことに注目、傷口に塗る外用消毒薬として開発しました。
キノリンは肝臓を損傷するといわれています。
その後キノホルムは戦乱時の未開発地域でアメーバ性赤痢対策として
軍用に服用薬として使用されていましたが、日本では第二次世界大戦後に
民間薬に転用。整腸剤として売り出されました。
大衆薬として売り出したのはチバ・ガイギーと田辺製薬、武田薬品。
欧米など他国では劇薬とされていたため販売されませんでした。
*ノバルティスは抗てんかん薬の違法マーケティング事件(2010年)や
高血圧治療薬ディオバンの臨床実験ねつ造データ事件(2013年―2017年)
で話題となった世界最大級の医薬品製造企業。

 

 

2. 原因不明の「しびれ病」が各地で続発

1965年ごろより日本各地で原因不明の奇病「しびれ病」が続発しましたが、
原因物質は発見できず、とりあえず亜急性脊髄視神経症(*スモン病)
と名付けられました。
(集団発生が顕著だったために感染症説が有力となりましたが、なんらかの細菌やウィルスの
食中毒が拡がった地域で、治療にキノホルム(キノフォルム)を使用し、
それも「服用量を増やせば治りも早い」とばかり安全性を無視する国民性が
災いしたと考えられるでしょう)

症状は下肢がピリピリする知覚や下痢、腹痛などの苦痛が相当期間続き、
次第に上半身に移動し、歩行困難、視力障害、中枢神経、末梢神経障害を発症。
悪化していくといわれます。
*スモン(SMON:subacute myelo-optico-neuropathy)

 

 

3. スモン病と名付けられた「しびれ病」の患者数

毒性が認知されていたキノホルム(キノフォルム)ですから、
それを大衆胃腸薬として販売し、被害者を出したのは主として日本。
1961年の患者総数は153人。
1965年の年間患者発生数は約450人。
1969年には年間患者発生数が約2300人、ここまでの累計は約7300人
1972年に登録された患者総数は9249人。
キノホルム(キノフォルム)薬害裁判時に被害者側が計上した患者数は約1万1千人。
死者は約600人。実数はその3倍と噂されていました。

 

 

 

4. 捏造データによりスモン病はウィルス感染症説が有力に

1965年久留米大学新宮助教授らは第65回伝染病学会西日本地区会にて
「スモン病患者の糞便・血液・髄液からエコー21型ウィルスを分離し、
スモンの病原ウィルス」であろうと発表
(使用サンプルの取り違え? なにかの間違い? 意図的?)。
同じ頃に京都大学前川孫次郎教授神経学会会長がスモンは伝染病であることは
明確で、スモンを伝染性索脊髄炎あるいは伝染性白質脊髄炎と呼ぶことを
学会で提案(確信した理由は不明)。
キノホルム(キノフォルム)原因説が有力になったころの1970年には京都大学医学部の
井上幸重助教授が「スモン患者の便から新型ウイルスを分離し、
分離したウイルスをハムスターに接種してスモン様の変化を起こすことに成功した」と
英国の学会誌ランセットに報じました。(ねつ造された不正情報だったことが後に判明)
井上助教授の発表から4カ月後、ウイルスの電子顕微鏡写真が報道され、
厚生省はスモンに伝染病予防法を適応すると発表しました(この項ウィキより)。
これらの報道によりスモン・ウイルス説は揺るぎないものとなったようです。

 

 

 

5. 厚生省、医薬品製造会社がスモン病キノフォルム原因説を無視

強い毒性が報告されていたキノホルム(キノフォルム)でしたが、一般用医薬品として
製造販売を承認した厚生省や田辺製薬などの製薬会社、スモン調査研究協議会は、
キノホルム(キノフォルム)の神経障害がたびたび報告されスモン病のキノフォルム原因説が
有力となっても、ウィルス感染症説に固執し、キノフォルム原因説を無視。
対応するアクションもなく販売が続けられました。

注目すべき米国のFDA(食品医薬品局)はサリドマイドと同様に
キノホルムの米国での販売ないしは製造を最後まで許可しませんでした。

1970年になると疫学調査に基づくスモンのキノホルム原因説が発表され(下記6項)、
多くの研究者、医療機関がその説を支持するようになり、ついに販売および
使用が中止されましたが、1万とも3万ともいわれる被害者が続出した後でした。

 

 

6. 東大、新潟大学教授らがスモン病の原因はキノフォルム胃腸薬と断定

田村善蔵東大薬学部教授らはウイルス説に懐疑的で、スモン病患者に特徴的な
症状である緑色舌苔、緑色便、緑色尿に注目。
スモン患者から分離した舌の緑色色素を分析し、その色素の本体が
キノホルムと鉄イオンの結合体であることを明らかにしました。
また新潟大学の椿忠雄教授はスモンとキノホルムとの因果関係を重視し、
患者の多かった新潟、長野両県でキノホルム患者の服用歴を疫学的に調査。
下記の調査結果を確認した椿忠雄教授は1970年8月にスモン病の原因は
キノホルムであると厚生省に報告。
*スモン病のほとんどの患者が、発症前にキノホルムを大量に内服していた、
*キノホルムの服用量が多い者ほど、服用期間が長い者ほどスモンの重症例が多い、
*キノホルムを中止すると改善に向かう患者が多い、
*キノホルムの服用によりスモンと同様の発症例が戦前に報告されている
1970年9月5日、椿教授は日本神経学会でスモンのキノホルム説を発表。
厚生省は「結論が出るまでは、同剤の使用を見合わせるべき」とし、
同時にキノホルム剤の販売を一時中止するように通達を出しました。
(この項はウィキ等より)

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歴史が浅いバイアグラは化学合成物質ですから長期間服用の安全性は不明ですが、その機能は窒素合成阻害酵素の阻害機能。 シトルリンが窒素合成の素材として機能し、レスべが窒素合成酵素を作り出す機能と切り口は異なりますが、中枢神経を興奮させる媚薬、催淫剤と一線を引く点では同じです。

 

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