長寿社会の勝ち組となるには(その1):
健康オタクが癌になり、認知症を防げないなぜ: サプリメントの危険性は薬用ハーブと過剰な摂食量
健康に関心が高く、食生活に配慮し、サプリメントも研究し尽くしている人が
認知症、突然の癌や脳卒中、心筋梗塞に襲われることが珍しくありません。
これらの病は急性ではありませんから、永年の「健康オタク自認生活」の
どこかに盲点、重大な欠陥があるはずです。
チェック項目は多々ありますが、代表的な一つが「サプリメント」
当然ながら化学合成素材は要注意ですが、天然だから、食材だから安全なわけではありません。
食材としての歴史が永いものは長期摂食の安全性が高いといえますが
長期間摂食するサプリメントで最も重要なのは食事並の摂食量に限ることです。
ビタミン、ミネラル、アミノ酸などはバイオ技術による化学合成で非常に安価に得ることが
できます。
メーカーは含有量を増やしてもコストに大きな影響はありませんから、大衆受けする即効性を
期待して大容量にしてしまいます。
有効成分は少量の単体では十分な能力発揮できませんが、自然に近い配合を工夫すれば
食事分量程度でも高い効果が得られます。
——-「必須酵素などの体内生成能力が低下した年齢」、「持病がある方々」に
「業界最大含有量」「レモンやトマト50個分」、「ワイン50杯相当」
「有効成分がxxxの数百倍」のサプリメント——-
これは消費者への「殺し文句」となりますが、大量摂食することにより腎臓、肝臓を傷めるばかりか、
体の諸物質生成機能が衰え(退化)ては逆効果。
過剰摂取の害の多くは腎臓、肝臓など内臓器官と骨に、徐々に時間をかけて現れます。
どんな体機能も加齢で完全に消滅するわけではありません。
内臓への負荷を減らし、諸器官を退化させないように、最高でも摂取量は一般的な食事量の
2-3倍くらいまででしょう。
1.サプリメントの安全性が問われています
サプリメント市場が拡大していますが、疑問視する声も少なくありません。
サプリと医薬品、食品との区別が定義できないところに批判の最大原因があるようです。
本来のサプリメントは、はっきり「日常的な食品のエキス」と定義づけられるものです。
サプリメントが副作用により凶器になるのは日常的な食材の何十倍もの大容量が
自慢の安価な化学合成サプリメントが出回り、その効果を期待する消費者が
後を絶たないからです。
またアミノ酸、ビタミン・ミネラルやポリフェノール、生理活性物質は、単体では最少の機能しか得られないにないにかかわらず、安価に化学合成されて単体で販売されることも
大量摂取の原因でしょう。
近年は化学合成されたビタミン・ミネラル、アミノ酸などのサプリメント過剰摂取は
効能ばかりでなく安全性の観点からも疑問視されるようになりました。
日常的な食材としての歴史が無い素材に有効成分があるならば、それは生薬です。
大容量を必要とするのは即効性が求められる医薬品。それ故に副作用を避けることができません。
ほとんどの医薬品は腎臓、肝臓にダメージを与えます。
副作用を覚悟して死病、難病と戦うのが医薬品。
特定成分だけを抽出したり、合成するサプリメントは
一般食材が持つ多様な成分による有害性の相殺作用、有益性の相乗作用、吸収性の促進作用を
期待できません。
数百年、数千年の永い歴史がある生薬ならば安全性が高くなりますが、生薬の主成分となる
植物のアルカロイドやテルぺノイドなどは服用分量が難しく、危険性が高いものです。
漢方など伝統療法の専門家は複数の素材を配合することにより、毒性の軽減、相乗作用を期待していました。
安全性が高い、ブドウなど赤いポリフェノールもホルモン様の作用をする成分がありますから摂取量には
十分な注意が必要です。
多種類ある生薬に単体で長期使用の安全性が確認されているものは食材を除けばほとんどありません。
2.サプリメントのルーツ
アメリカをはじめほとんどの国ではサプリメントの一日摂取量や効能は
ドイツのデータを引用しています。
ドイツは古くから中国、インド、中東など紀元前から医学が進んでいた国の
伝統医療を研究。
薬剤として200種類以上の自然素材を取りあげ、科学的な分析によって
効能や摂取法をとりまとめています。
2000年ごろまでは医薬品の6から8割以上が自然界から
得られた素材や情報をルーツにしていたといわれます。
アメリカではドイツのデータをもとに法的に医薬品の対象とできない
素材を安全性を問わずにサプリメントとして販売するようになりました。
これが医薬品とサプリメントが線引きできない最大の原因。
医薬品として法的に指定されていなければ、どれもがサプリメント。
一般消費者にはこのような感覚があり、過剰摂取の危険に曝(さら)されます。
ドイツ、フランスでは医薬品として販売されるハーブ(例:イチョウ葉エキス)も
日本で薬事法の対象とならなければ安全性が高いサプリメントというのが
消費者の認識のようです。
3.食材の医薬品と化学合成された医薬品
すべての健康は食生活によって築かれますから医食同源は永遠の真理。
したがって伝統ある食材を薬と呼んでも間違いではありませんが
逆は必ずしも真ではありません。
伝統医薬素材の相当部分は食材ともなっている素材ですが
鉱物や有毒動植物など食材としての歴史が無い素材が多数あり
それがサプリメントの市場に混入しています。
医薬品のほとんどはピンポイントで効果があるわけではありませんから、
目的外の体組織にも作用します。
生死にかかわれば当面の病魔を退治するのに副作用は覚悟の上。
即効を期待されますから一回当たりの容量が大きく、
危険も伴いますが、それは必要悪。
食材から抽出した成分を数百倍にまで濃縮した薬も珍しくありませんし
大量に使用される素材は天然素材ではコスト的にも調達がむつかしいために
化学合成されます。
一例を挙げれば目覚ましい進歩を遂げている糖尿病の医薬品。
アクトスの副作用が話題となった後はスーグラなどSGLT阻害薬。
どの世代の医薬品も生体機能の一部を強制的に制御するものですから
そのための不都合も当然ありますが、たとえ「モグラたたき」となっても
当面の敵を排除する已むを得ない手段といえます。
ところがサプリメントは治療目的として使用する場合も
最も優先されるポイントは長期服用(摂食)の安全性です。
4. 安易なビタミン、ミネラル、アミノ酸の摂取は危険:阻害される体内生成能力
サプリメントはあくまで食品を補うものです。
したがって日常的な食材から発展して開発されるのがサプリメント。
医薬品に起こりがちな副作用が少ないだけに、食事同様に継続性が無ければ効果も薄いものです。
食品に含まれるビタミン、ミネラル、アミノ酸といえども、化学合成して単体の大量摂取をすることは
副作用の危険を伴うばかりでなく、体内生成能力が損なわれ(退化)ます。
ビタミンA、C、E、B6、葉酸、αリポ酸、鉄分、カルシウム、βカロテン(カロチン)など
ビタミン、ミネラル類ばかりでなくアミノ酸、CoQ10、酵素類、乳酸菌の過剰摂取が問題視されるように
なったのは最近ですが、かねてより合成素材や生理活性物質などの過剰摂食の危険性は
指摘されていました。
日本人はカルシウム、欧米人はビタミンD、Bを除いては日常的に不足するものではありません。
個々の体調に合わせ、病気や過激なスポーツなど必要時に少量の補充で充分。
合成ビタミン、ミネラル、アミノ酸は特に要注意です。
「体の機能を怠け者にしない工夫」
5.日常的な食品、食材も食べ過ぎは危険
日常的な食材の安全性も、一日の食事分量で経験的に確認されているだけで、
大量摂食の安全性テストは、過去にはほとんどありません。
食材の三世代にわたる安全性調査が始まったのは数十年くらい前からです。
食材にもよりますが、データがない限りは安全な増量は必要時に2-3倍くらいが限度でしょう。
サプリメントは食事のバラエティーが不足するとき。
食事では摂食量がやや不足するときに摂食すべきもので、1日の食事の範囲を大幅に上回る
量を一度に摂食することは危険を招く元です。
豆類、キノコ類、イモ類、ハーブ類など健康に寄与するといわれる食材ほど、
食毒性を持つものが少なくありません。
永年食されて長寿やエネルギー増強に寄与する肉類でさえ発がん物質を持つ有害性を
指摘する論文が数多くあり、「食べ過ぎないように」という警告が国家レベルから
発せられています。
ブドウ・レスベラトロールも数千年を超えるといわれる食材の歴史を持ち、
広範囲に健康寄与しますが、ミトコンドリアに作用する特殊物質。
伝統的な食用摂食量を大幅に上回る過剰摂食量は逆効果となります。
ブドウ・レスベラトロールには血小板作用の阻害機能や女性ホルモン様作用があります。
特に脳梗塞予防剤、アテローム阻害剤などを服用している方には再発防止に有用となる反面、
食生活を大幅に上回る摂食には副作用があります。
大豆の大量摂食も納豆、味噌など発酵大豆を例外として、有害との学説も珍しくありません。
またキノコには数多くのサプリメントが出現しましたが、キノコのうま味の成分は
毒素にもなる成分として知られています。
「毒性が旨味(うまみ)となるキノコ毒素(mushroom toxin)」
6. 自然な食材の各成分は補完し合って安全性が高くなっています:
キラル (chiral)と(ラセミ状態:racemic mixture)
食材の有効成分は固有成分を抽出したり、合成するのではなく、出来るだけ当該食材と
同様の自然な成分構成を持つサプリメントが必要です。
有効性と毒性は表裏一体の場合が少なくありません。
有用成分は単一より複合で効力を発揮することが多いだけでなく、
他成分がその毒性を中和します。
また化学合成素材は化学式が同一でも天然とは異なります。
キラル (chiral)と呼ばれる異性体(鏡面体)です。
酵素(タンパク質)に例をとれば、合成アミノ酸の異性体(鏡面体)と呼ばれる
左右のD体(dextro-rotatory)とL体(levo-rotatory) が似たような薬理作用、毒性を示す場合や、
一方だけが毒性を持つ場合があります。
また両体の作用、反作用が拮抗する(ラセミ状態:racemic mixture)ことで
効能が相殺されることもあります。
1960年代前後に腹痛、下痢止めの生薬となる天然素材成分を合成したところ
毒性がある異性体が合成され被害者が続出しました。
副作用データを隠ぺいした田辺製薬の不誠実が話題となった
整腸剤キノホルムによるスモン病(subacute myelo-optico-neuropathy:SMON)です。
今では合成医薬品開発には異性体のチェックが必ず実施されます。
「整腸剤新薬キノホルム薬害の教訓」
市場には消費者を惑わすコピーが溢れています。「食事では毎日摂食出来ません。
サプリでどうぞ」「食事では摂食量が不足します。大容量のサプリをどうぞ」
「加齢で必要成分生成が若い時のxx分の1。サプリで補いましょう」
などなど、
安全性には触れずに容量の多さを競います。
有用食材の天然成分ならば大量摂食は不要です。
「合成アミノ酸トリプトファンによる好酸球増多筋痛症候群(EMS)事件」
筋力増強のために、しばしばアミノ酸を常用しているアスリートに
腎臓機能障害を発症している実例が数多く発生しています。
合成アミノ酸サプリメントはアスリートが筋肉に十分なグリコーゲンを
また蓄えるための糖質合成(incorporate enough carbohydrates )をも
困難にし、健康を損ねます。
7. 食材には後天的に毒性を持つものがあります。
これまで相当な安全性が確認されている食材も安全が永続するわけではありません。
自然の中では常に変化が起こります。
例えばシガテラ中毒。
南方系の有毒赤潮が、そのプランクトンを好む魚を汚染するのがシガテラ。
温暖化による海温の上昇により、南方系の赤潮が北上し、シガテラ中毒が温帯地方でも
発症するようになりました。
イシガキダイ、ハタ類、フエダイ、ブダイ、などに多い中毒ですが、
多くの魚が汚染される可能性を否定できません。
ヒ素に汚染されたヒジキも後天事例でしょう。
ヒジキのヒ素汚染は海外で危険視され、禁止もされますが、日本やアジア温帯地域が産地だけに、
日本の行政当局の発言は無く、話題になることは多くありません。
キノコは安全といわれる品種でも大量摂食を奨められませんが、「食べられるキノコ」が
後天的に毒性を持つ可能性も否定できません。
近年ではスギヒラタケで相当数の死者がでました。
8. 無添加、有機栽培を謳う食品には危険性もあります
有機食品、自然食品と称される食品は偽装が多い分野です。
大手デパートでチェーン展開していた有機、自然食品会社が詐欺的な商品を
販売していたのが記憶に新しいところです。
有機農産物の定義は非常に厳しく、コストがかかるために簡単にクリヤーできません。
こんなおりから米国食品食品医薬品安全局(FDA)が摘発した有機や無添加を謳う食品の
落とし穴が話題となりました。
その一つが寄生虫のクリプトスポリジューム(Cryptosporidium)に汚染された
乳幼児用 サプリメントだったのは皮肉です。
無添加(additive free)、有機(organic)、天然(natural)を謳う商品は、
感染症の原因となる微生物に侵されやすいことがかねてより指摘されています。
FDAが警告した事例は、有機食品や無添加食品の購入は、姿が良く見える堅実な会社の選択が
重要なことを再認識させました
9. (参考)ミネソタ大学のアイオワ女性健康調査(the Iowa Women’s Health Study)
(2011年12月追記)
ミネソタ大学では1986年以来、4万人規模の中高年女性慢性疾患大規模調査(55-69歳の
更年期女性のコホート調査)をしています。
この中間報告で「マルチビタミンを摂取している55歳以上の婦人は摂取していない人の
数倍も死亡リスクが高い」と発表。
肥満と心臓病が国民病ともいえる米国ではマルチビタミン愛用者が40%を超えるそうです。
今回発表された調査内容はマルチビタミンを含む15種類のビタミン、ミネラル・サプリメント摂取の
有効性と有害性。対象はすべて化学合成された素材です。
この報告にはマルチビタミン同様にリスクの高いビタミン類にvitaminA,C,E、
葉酸、vitamin B6、鉄分( iron)、カルシウム、 マグネシウム、などが含まれています。
1922年以来この分野をリードしてきたハーバード大学公衆衛生学部
(the Harvard School of Public Health)によれば
「調査対象の相当部分が、すでに健康を極度に害している人」。
「病状が悪化してから食生活を改善したり、サプリメントを愛用する人が多い」ことから
この調査のすべて正しいわけではない、としていますが、
基本的にはビタミン、ミネラル、アミノ酸の選択ミス、過剰摂取が死亡リスクを高めるということは
否定していません。
特に合成ビタミン、ミネラル、アミノ酸の摂取や栄養素強化食品の効能は否定的です。
サプリメント業者が厚生省推奨許容摂取量(RDA:the Recommended Dietary Allowance)
の何倍、何十倍(かっては600倍なども珍しくありませんでした)を競う傾向には警告もしています。
厚生省推奨許容摂取量も確たる根拠は数十年の調査では得ようがありませんから、
保証されるものでない「推奨」であると断っています。
10. (参考)サプリメントの摂取量(摂食量)とは
ビタミン・ミネラルの適正摂食量は個人個人によって大きく異なります。
目安には米国のrecommended daily allowwancs(RDA:推奨一日許容量)や
厚生労働省傘下機関が発表するものもありますが、あくまで短期間摂取の安全性の推定量。
食品のようにいつでも、いつまでも食べて良い安全量ではありません。
第二項のように、各国ではハーブ類サプリメント本家のドイツを見習っていますが、
歴史のあるドイツでも長期的にお安全な摂取量となると現在でも研究途上であることを公表しています。
最近の30年くらいは各国でビタミン・ミネラル、アミノ酸の疫学的な大規模調査が始まっていますが、
安全性の確認には3-4世代、100年以上の調査が必要だからです。
研究の中間報告がでるようになりましたが、合成ビタミン・ミネラル、アミノ酸の
サプリメント摂取有害の報告が多くなっています。
必須脂肪酸などと異なって、ほとんどの食品に含まれるビタミン・ミネラル、アミノ酸は
(個人差が激しいために)第三者が必要摂取量を推定するのは困難です。
平均的な適正摂食量というものは無いに等しい状況。
ビタミン、ミネラルはいくつかの例外を除いて日常的にサプリメントを摂る必要のない
(というより、多すぎる)ことがほとんどです。
軟水を常用する日本人はカルシウムが不足しますが、土壌栽培の野菜で補完すべきでしょう。
偏食、病後、手術後、特別な疾患など必要性が高いケースには医薬品もあり、
医師との相談が無難です。
初版:2011年11月04日
改訂版:2015年10月20日
改訂版:2017年10月20日