第二十八話:マスコミが報道する「産業の空洞化」のアンチテーゼ
■商業への回帰本稿ではマスコミ報道のアンチテーゼに挑んでみたいと思います。数十年来、盛んに危機感があおられている「産業の空洞化」についてです。その前に、産業革命以後の世界の経済をざっと振り返ってみますと、まず職人気質、すなわち科学技術主導の工業化が国冨を蓄積し、いわゆる先進諸国にリーダーシップをもたらせました。その延長線上で、軍需産業の進捗が核の脅威を生み、それが東西冷戦の終結へと向かいました。その後は、共産主義経済圏の資本主義・自由経済圏への参画によって、分断され偏在していた交易市場が、一挙に全世界へと拡大。それとともに、宇宙産業の民営化から生まれたIT技術が金融工学と結びついて、世界の人・モノ・カネが、加速度的な勢いで巨大な移動と交流を生み出す結果となっております。今、世界はグローバル経済時代に入っていますが、実はその本質は「商業への回帰」であるように思えます。古代返りというべきか、パラダイムの逆転が起こりつつあるのです。筆者が世界に向けてマーケティングに取組んだ頃、先輩たちから「商人道を学ぶなら、〝チャ・イン・パキ、イラ・イラ・レバ・シリ、ジュウ・トルコ〟(華僑、インド人、パキス...