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健康と食品の解説

トランス脂肪酸のニュースと解説

遺伝子組み換え作物が否定される何故(なぜ): 15年続いている安全性疑惑

タバコから始まった遺伝子組み換え(GM)農産物は、1996年にモンサント社がトマトなどの組み換え食品を発表し、食材の生産が始まった頃から賛否の議論が沸騰し始めました。ヨーロッパの行政当局や日本の消費者には組み換え食品(genetically modified)反対論が根強くあり、EUは組み換えダイズ、トウモロコシ、キャノーラやワタの輸入承認を2014年現在も依然留保しています。1.遺伝子組み換え食品(GMO)が嫌われる10の理由何故日本やEUでは遺伝子組み換え食品が嫌われるのでしょうか?反対派が多数存在するのにもかかわらず、世界全体で見ればGMO食品は減少しておらず、1996年に企業製品化してから、僅かながらも年々増加しています。特に安全性問題が表面化した渦中でも1999年から2004年までの5年間の統計では、作付け面積が倍増しています。食材ではない綿に関しては、急増といえるでしょう。発展途上のアフリカ諸国やブラジルの生産増が続いているためこのトレンドは2014年までの10年間も続いています。2004年当時に組み換え農産物に反対する人々の根拠には、次のようなことがあげられていました。a...
健康と食品の解説

ブドウ・レスベラトロールと乳がん治療のエピジェネティクス

4月30日(2015年)の日本経済新聞社会面で報道された熊本大学発生医学研究所による乳癌再発制御に関する研究。ホルモン療法による乳癌治療後、当該エストロゲン受容体周辺に、がん遺伝子を活性化させる分子が多数発生していることを突き止めたということです。研究者らは薬剤耐性が発生する原因となっているその分子の活性化抑制物質を探索。ブドウ・ポリフェノールのレスベラトロールに最も強い制御能力を見出したそうです。1.エピジェネティクス(epigenetics)科学とレスベラトロール熊本大学発生医学研究所は生命科学の先端研究手法の一つエピジェネティクスの探求で知られています。今回の報告は癌や生活習慣病を研究する中尾 光善教授 、 斉藤 典子准教授 らの研究室が主導しました。エピジェネティクスは2010年頃より医療業界で話題となっている概念。DNAたんぱく質が突然変異や親から子へ受け継がれる以外に、食生活、体組織の酸化、大気汚染、紫外線などの環境汚染によって変化、疾病が発現する実態を探求する学問。DNAたんぱく質のアミノ酸配列(組成)を変化させることなく機能が異質となる現象の追求と言い換えることができま...
トランス脂肪酸のニュースと解説

老化、癌を招く過酸化脂質(ペルオキシド)の過剰摂取

老化、癌を招く油脂過剰症は過酸化脂質(ペルオキシド)の過剰摂取: 食用油の酸化防止法老化、癌を招く油脂過剰症は過酸化脂質やトランス脂肪酸により発症します。過酸化脂質(ペルオキシド:peroxide)とトランス脂肪酸は親戚。一般的には同義語と解しても間違いありません。食生活では食品の酸化を日常的に防止する策が必須です。大半の食品の脂質は中性脂肪が占めています。中性脂肪で最も多いのがトリアシルグリセロール。高脂血症の元凶です。1.油の酸化度を測定する方法油の酸化度評価にはいくつかの手法がありますが過酸化物価(POV)と酸価(AV)が代表的。過酸化物価(Peroxide Value):空気にさらされた油脂製品は、油脂成分が酸化して活性酸素(ヒドロペルオキシド)が生成しますが、油脂1kgあたりの活性酸素をミリ当量で表したものがPOV。酸価(Acid Value):調理などで脂質が分解して生成される遊離脂肪酸を測定する項目ヨウ素価:同一条件下で食用油の酸化進行スピードは素材によって異なります。程度はヨウ素価でわかります。高いほど酸化しやすい素材です。ヨウ素価測定にはキットも市販されていますが消費...
健康と食品の解説

花粉症の根源はサラダオイルのアラキドン酸: 悪玉アラキドン酸から作られる生理活性物質

アレルギーの原因となる様々な抗体は細胞膜に存在する不飽和脂肪酸(リノール酸)の助けが無ければ生成出来ません。リノール酸を減らし、魚油などのオメガ3脂肪酸を増やすのが花粉症退治のキーとなります。1.アラキドン酸(arachidonic acid:AA)とはアラキドン酸(C20H32O2分子量304.47)はリノール油から作られるリノール酸(C18H32O2分子量280.45)が変換したもの。炭素が鎖状につながる分子構造(炭素鎖構造)からはオメガ6とよばれています。アラキドン酸の代謝物は100近くあり、構造が少しずつ変化して善玉、悪玉のどちらにもなる強力な作用物質。細胞の細胞膜リン脂質からアラキドン酸が遊離されると、細胞の種類ごとに特定の酵素が働いて、種類の異なるアラキドン酸代謝物へ変換されます。*脂肪酸代謝物の詳細は下記を参照2.アラキドン酸から作られる生理活性物質花粉症最大の原因が食によるオメガ6(リノール酸)とオメガ3(EPA/DHA)との脂肪酸バランスであることは理解がすすんできました。ところが、ヨーロッパからの最新研究報告によれば、オメガ6はバランス良く摂るというより、摂食を止め...
健康と食品の解説

湘南産天日干し切りダイコン(解説)

湘南産天日干し切り干し大根はノギ・グループ推奨の国民健康食品(Recommended National Healthy Foods) 12月から1月は日本の各地で切り干し大根が作られます。生ダイコンは消化器に良いジアスターゼや血栓予防に働く辛味成分のアリルイソシアネートが豊富なことで知られますが、切り干し大根は、天日に干すことによりビタミン、ミネラルが飛躍的に増加。特にカリウムが豊富な素材はバナナなど限られた食材しかありませんので切り干し大根は高血圧に良い乾燥野菜として珍重されています。湘南藤沢市鵠沼産の露地栽培大根のみを使用した天日干しの切りダイコンは生食シーズンの終わった12月から1月の短い期間に作ります。晴天が長く続く時期をみて、小規模に作りますので生産量が限られます。上の写真は湘南産天日干し切りダイコン.生産数量がごく限られますので非売品.天日干しに基準はありませんが「湘南産天日干し切り大根」は晴天7日間の天日干しを自主基準にしています。7日間の天日干しによりビタミンB群、カルシウム、カリウム、マグネシウム、糖分が4-15倍。豊富な繊維質とマグネシウムが便秘やPMSに、カリウム...
感染症の海外ニュースと解説

増え続けるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と肺炎球菌感染症

慢性気管支炎、肺気腫などと呼ばれていた肺疾患がCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と総称されるようになったのは2000年代ごろから。喫煙が主原因とされていますが、急成長する発展途上国都市部では大気汚染も大きな原因と考えられています。COPDは重症化した場合に治療法がほとんどありません。1.COPD(慢性閉塞性肺疾患)が流行させる新型インフルエンザ今年(2014年シーズン)のインフルエンザ流行は例年より早く始まりました。最近はワクチン接種が普及したのと、タミフルなどノイラミニダーゼ阻害剤による初期段階での封じ込めが功を奏し、インフルエンザが重篤化することが少なくなりましたが、児童の脳炎、健康弱者の肺炎は相変わらず減りませせん。鳥インフルエンザH5N1などの変異による発生が予想される新型インフルエンザは、拡大するとすれば要因として呼吸器関連疾患を持つ人たちの急増が挙げられます。世界の保健当局が懸念するのはこの点です。喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などで免疫力が弱まっている時が最も新型インフルエンザ・ウィルスに抵抗力がない時と考えるべきでしょう。COPDのほとんどが自覚症状の軽い潜在患者であるが...
健康と食品の解説

心房細動と観賞花ジギタリスのシアン配糖体 再発危険性の高い脳梗塞は心房細動が原因

1.心房細動と脳梗塞中高年になると、生活習慣によっては、心房細動の発生確率が急増します。心房細動は、心房の収縮、弛緩をつかさどる微弱な電気信号が、不規則になる不整脈現象。動脈が硬化してくる高齢者では、よく見かける症状ですが、多くの場合、不整脈や脚のむくみが予兆となります。心房細動は2004年3月に長嶋茂雄元巨人軍監督が心原性の脳卒中を発作したケースが心房細動による血液滞留と言われ一躍名を知られるようになりました。健康のためにスポーツをする人が増えて中高年のテニス、ゴルフなどスポーツ中の脳梗塞事故は増える一方。脳梗塞は心房細動を原因とすることが多く(50%以上とも言われます)、この場合は重篤な症状となることが多いうえ、原因の心房細動が続けば脳梗塞再発が繰り返されます。その他、原因は特定できませんが、高齢者、不眠、ストレス、肥満、高血圧、アルコール飲料過多、喫煙、心疾患の既往症のある方などに発生が見られます。不整脈計測には、手の付け根の動脈より、自分自身で脈を取ることをお奨めします。正常な脈拍は安静時で60-80回/分が目安と言われます。2.血栓とプラーク血液は、心臓の右心房から右心室、肺...
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シトルリンここのつ(9)の何故? Q&A

瓜(うり)類はシトルリンが豊富1.窒素合成に関わるシトルリンとレスベラトロールは何処が異なるのでしょうか?シトルリンはアミノ酸の一種として窒素を合成する場合は、その原料となります。またレスベラトロールが窒素合成に関わる場合は、窒素を合成する酵素を活性化させる、間接的な物質となります。窒素合成に関わることでは同じですが、作用は全く異なります。自動車に例えればシトルリンがガソリン、レスベラトロールは電気といえます。シトルリンが動力燃料、レスベラトロールはセルモーター、ウィンドウ、ワイパーなどを動かし、シリンダーをスパークさせる電気です。レスベラトロールは電気同様に、体の色々な部分で、多様な働きをします。2. L-シトルリンとシトルリンは異なるのですか?:Lシトルリンがあたりまえです。ノギのシトルリンはL-シトルリンです。当然のこととして省略しているだけです。シトルリンのようなアミノ酸類や糖類には分子構造が非対称な、鏡に映したような(鏡像)関係にあるL-体、D-体と呼んでいる2体の異なった分子(異性体)が存在します。天然のアミノ酸類はL-体のみ(例L-シトルリン、L-アルギニン)。DNAとタ...
危険ハーブ、覚醒剤、麻薬

サルビア・アルカロイドは覚醒剤LSDと同じ? 植物の覚醒アルカロイド

タンジン(丹参:Salvia miltiorrhiza)サルビア(セージ、コレウス)のインドール・アルカロイド1.サルビア・ディヴィノルム種の幻覚物質(hallucinogens)夏から晩秋までは、様々なサルビアが咲き続けます。サルビアはしそ科(Labiatae)の多年草で、同類のコレウス(コリウス)と呼ばれる種類を含めて世界に700種類以上の栽培種があるといわれます。観賞用の園芸種も多数作られていますが、花の少ない時期に咲く貴重な草花です。食用にされる種類はセージと呼ばれますが、この分野も人造品種、園芸品種が多く、区別が難しいために食中毒が絶えません。このサルビア類には、中枢神経に作用する、インドール・アルカロイド(indoles alkaloids)を持つ種類がいくつか知られています。特にサルビア・ディヴィノルム種の幻覚物質(hallucinogens)はメキシコ現住のマザテック・インディアンが宗教儀式に使用していたことから、合法ドラッグと称して世界中に広まり、危険な副作用が懸念されています。2.食用、薬用のサルビア(Salvia)コモン・セージ(Common sage:Salvi...
健康と食品の解説

ブドウ・レスベラトロールが記憶と脳の柔軟性経路を制御する

1.ブドウ・レスベラトロールが記憶と脳の柔軟性(可塑性)を制御するマサチューセッツ工科大学(MIT)に属するMITピカワー学習・記憶研究所(PILM)より長寿のポリフェノールで知られるレスベラトロールに記憶力を増大させ脳力を強める(頭が良くなる)働きがあることが報告されました。7月11日発行のネイチャー誌に発表されたものですが、主筆はサイ教授(Li-Huei Tsai)。「新たな経路がマイクロリボ核酸134とサーチュイン1(SIRT1)を経由して、記憶と脳の柔軟性(可塑性)を制御する」(A novel pathway regulates memory and plasticity via SIRT1 and miR-134).論文詳細は省きますが、この研究はアルツハイマー(Alzheimer)や脳神経を衰弱させる諸病治療の医薬品開発につながると期待されています。発表したサイ教授らのグループは、レスベラトロールがサーチュイン(sirtuins)を活性化させ長寿を達成する機能ばかりでなく、加齢による神経変性異常(neurodegenerative disorders)を防ぐことを、すでに報...
健康と食品の解説

アナフィラキシー・ショックと秋に凶暴なスズメバチ類

1.住宅地に拡がるスズメバチ毒素の事故猛暑後の秋はキイロスズメバチ の繁殖が通常以上に多くなります。夏の好天と猛暑により、巣作りが容易になり、餌の昆虫も多く発生しているからです。スズメバチ類は例年9月ごろから11月にかけて活動が活発化しますが、住宅地が拡大して山間部を侵食するようになってから蜂に刺される事故が増え続けています日本ではハチ毒による死者は、多かった1989年が70人、毎年平均30人を超えていましたが最近の10年くらいは救急注射の普及で減少しています。特徴的なのは1993年以降の30年間で50歳以上の被害死亡者が90%以上。そのうち70歳以上が50%を占めることです。死亡の原因は主としてキイロスズメバチとオオスズメバチによるアナフィラキシーショック(Anaphylaxis)。 東京のベッドタウン川崎市麻生区で、生垣手入れ中の作業員男性がコガタスズメバチと見られる巣を破壊してしまい、10数匹のハチに襲われたことがあります。刺された男性はアナフィラキー・ショックにより数十分も経たずに死亡しました。例年、蜂の行動が活発になるのは夏の終わりから、秋にかけて、女王蜂が独立する分蜂活動が...
健康と食品の解説

ブドウ・レスベラトロールはガン阻害物質に変化する

「ブドウ・レスべラトロールは体内で代謝されると化学反応を起こし、硫化レスベラトロールになることによってガン退治により有用になる」という8年間の実験に基づいた研究が発表されました。かってはブドウ・レスべラトロールは体内代謝が早く効果が無くなると否定した研究者もいましたが、それを否定するばかりか、発表された研究によれば効用はこれまで知られていたデータをはるかに上回ることが確認されています。。この研究は英国中部のレスター大学癌研究と分子医薬品the University of Leicester's Department of Cancer Studies and Molecular Medicinの研究者らがサイエンス・トランスレート・メディシン誌(Science Translational Medicine)に掲載したものです。「Red wine chemical remains effective against cancer after the body converts it:赤ワインの化学物質(ブドウ・レスベラトロール)は体内化学反応でガン退治の有効物質に変換」この研究ではブドウ...
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ブドウ・レスベラトロールが卵巣老化を防止

遺伝子工学による不妊治療と若返り: 1.卵巣は最も老化の早い器官男女にかかわらずアンチエージングは大きな関心事。特に女性の美容にとって最大の敵が老化.ほとんどの女性にとって抗老化は最大の関心事かもしれません。ところが他の体内器官に較べ老化が早い卵巣(ovarian)に関する細胞の代謝については研究論文があまりありませんでした。女性は30才を過ぎると卵巣の質が低下し始め、卵母細胞(oocytes)の染色体異常がみられるようになるといわれます(米国人)。また40才が近づくとその質は急降下。この卵巣機能低下のプロセスを把握することが老化防止、不妊治療の近道として実験を繰り返しているのがハーバード大学医学部医学部幹細胞研究所教授のジョナサン・ティリー博士(Jonathan L Tilly)と長寿のレスベラトロール機能を発見した遺伝学部のデーヴィッド・シンクレアー博士(David A. Sinclai)ら。二人は今年6月に新たな論文を発表しました。ジョナサン・ティリー博士はマサチューセッツ州総合病院において不妊治療にも取り組んでいます。2.加齢のメカニズムを理解することにより不妊治療が大きく進展...
健康と食品の解説

スイカのL-シトルリンがアスリートの筋肉痛を和らげる」 Watermelon juice relieves post-exercise muscle soreness

日本では野菜、果実栽培の工場化を目指しての動きが広がっています。経済効果が最優先されるからですが栄養面、安全面の配慮に対する情報はあまりありません。そんな風潮を良しとしない研究者がスペインのエンカルナ・アグアヨ(Encarna Aguayo)カタルヘナ工業大学助教授.文中のL-が無いシトルリンもすべてL-シトルリンのことです.1.世界で問われる農産物の工業化と工場化の是否ことところTPP対策として野菜など農産物を工場化するのが流行ですが、生産の集約は当然としても工業化には消費者に説明していない欠点が多々あります。日本では美味しさの追求、病害虫対策、歩留まり重視の生産性向上などを目的とした工業化農産の研究が盛んですが、食品としての農産物に最も必要なのは栄養と安全。食材は接着剤などの工業原料とは異なります。畜産用の飼料でさえ間接的に人体に影響を及ぼします。2.欧米の食品科学者は農産物の栄養素確保と安全性確保の重要性に注目品種改良、遺伝子組み換え、ハウス栽培、無農薬、無化学肥料の有機栽培、水耕栽培などは栄養面、安全面で未知、未明が多々ありますが、公開情報が不足しているのが現状。検証途上または...
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少量のレスベラトロールでカロリー・リストリクション

カロリー・リストリクション(CR)効果: 少量のレスベラトロールで長寿を達成1. ワイン・レスベラトロールが欧米で話題沸騰ボストンのサートリス社はレスベラトロールの研究で中心的な役割を果たしているハーバード大学医学部と産学協同でレスベラトロールの新薬開発をしているベンチャー企業。ハーバード大学のシンクレアー教授を中心に設立されました。2008年6月に入り大手製薬会社のグラクソ・スミス・クラインによるサートリス社買収が完結しました。買収金額は1株当たり22ドル、開発途上の研究会社としては異例の総額720万ドル(約800億円)と報道されています。この頃(6月4日)に北部のウィスコンシン・マディソン大学と南部のフロリダ大学が「少量のブドウ・レスベラトロールでカロリック・リストリクション効果が得られる?」をテーマにした共同研究を発表しました(オープン・アクセスの科学ジャーナル誌:PLOS one)(Public Library of Science One)。ブドウ・レスベラトロールのダイエット効果、アンチエージング効果などが現実性を持ってきたことは、専門誌を始め、米国では最大手の新聞U.S....