細胞老化と癌(その15): 線虫が予見した長寿達成と癌制御のメカニズム: インスリン受容体と線虫の突然変異体daf-2とdaf-16
癌と長寿をテーマに連載を続けていますが、難敵の癌を征服することは糖尿病、過剰免疫疾患を含めた様々な難病をも征服し、多くの人が願う健康長寿を達成することに繋がります。メカニズムが共通だからです。癌細胞の代謝による大量の活性酸素発生と好気的解糖(aerobic glycolysis)によって生じるグルコース(ブドウ糖)は、癌細胞の栄養素として癌細胞を増殖させていきます。このメカニズム追求が細胞内インスリンシグナル(この場合はグルコース代謝経路での情報伝達)の下流(伝達段階の先)で制御される遺伝子転写因子といえるタンパク質(FoxO1)の発見につながり、癌の転移、拡散、成長などの研究発展に繋がりましたが、糖尿病のメカニズム探究にも大きく貢献しています。1. なぜ線虫(Caenorhabditis elegans)の研究が必要か?寿命を縮めるテロメア短縮酵素を阻害する酵素のテロメラーゼを活性化させるサーチュイン関連物質の研究が長寿や癌の予防に最も重要ということに異論はほとんどなくなりました。しかしながら、サーチュインや類似物質の作動、活性化、消滅などの機序が全て解明されているわけではなく、まだ...