第四十九話:「ロシアに領土返還の意志はなし」
このところ、岸田外相がロシアを訪ねラブロフ外相と会談したり、来る国連総会で安倍首相がプーチン大統領と会談して大統領の年内訪日を希う段取りを進めるなど、日露平和条約締結へ向けた北方領土返還交渉を急ぐかの動きが盛んですが、このタイミングは極めてまずいと考えます。第一に、ロシア側の動きは、北方領土での新型経済特区開発計画を進めており、メドベージェフ首相がつい先月にも択捉島を訪れるなど、度重なる暴挙を繰り替えしたばかりであり、むしろクリミア半島の一方的な併合とウクライナ東部地区親露派への軍事支援続行、シリア支援などは、明らかに「国際秩序に対する挑戦姿勢」の発露と見るべきで、オバマ弱腰外交に付け入る戦略の一環であり、力の行使を強めている習中国と歩調を合わせた“新たなる東西冷戦”の勃発と捉えるべきなのです。 第二に、ロシア側の北方領土問題に対する政府高官の諸発言からして、不法占拠の認識など皆無であり、むしろ歴史を捻じ曲げるような「解決済み」とか「大戦の結果手にしたもの」と強調する一方で、最近の国営通信社の発表によれば、この地に新型地対空ミサイルを配備したとのことで、軍事拠点化を推し進め、既成事実の...