1. 8月以降株価右肩下がりが続いていたファイザー社
株式市場は先見性を持つといわれ企業評価の最大指標となりますが、米国NY 証券市場は2021年7月ごろよりCovid-19ワクチンの落日が近いことを予見。
今年2021年の8月の最高値以来、ワクチン最大手ファイザー社の株価は右肩下がり。
わずか2か月間で10%から15%の大幅下落を続けていました。
世界のCovid-19ワクチン需要(有料分)は、すでに黄昏期(たそがれ)なのでしょう。
Covid-19ワクチンを製造している米国のモデルナ社も10月中旬ごろには今年最大幅といわれる22%の大幅下落。
ファイザーのパートナーであるドイツのビオンテック社、米国のジョンソン&ジョンソン社などの株式も同期間に大幅下落しています。
2021年のファイザー社は独占的になっているワクチン販売により売り上げが2019年に比べ倍増の10兆円に近付いていますが、
世界のCovid-19ワクチンは、すでに総人口に近い70億回分が製造されつつあるといわれ、巨利を生み出しているCovid-19ワクチンの継続性に関して市場では悲観的な見方が広がっていました。
*ノギボタニカル、ロハスケは情報の客観性、公平性を保つために関係者の株式投資は一切禁じています。
2. 阻止勢力が暴徒化するワクチン接種証明書の法制化
危機感を抱いている最大手のファイザー社らは、頭打ちとなったワクチン接種状況を打破すべく、8月ごろからバイデン政権に強力にアピール。
接種済み者への第三次ワクチン接種や、若年層、子供への接種を促すと同時に、先進国が未接種者へ強制接種できるように、法制化を求めますが、英国が法制化に失敗したため、強行策は頓挫。
法制化が難しいならば、ワクチン接種済み者には証明書を発行するよう、各国指導者に訴えていますが、事実上のワクチン接種強制ですから、日を追うごとに反対運動が拡大、各地で暴徒化する騒動までが起きています。
Covid-19は各国、各地域で発生状況、拡散状況が大きく異なりますから、世界が一律にワクチン・メーカーの主導に従うとは考えられません。
「ワクチン接種済者は他を感染させないが、ワクチン未接種者は他を感染させるから行動を制限する」との発想は根拠が乏しく、多くの有力学者からの否定論文が相次ぎ、先が見通せません。
3. ゲームチェンジャー(Game changer)はCovid-19経口治療薬
頭打ちといわれる世界のCovid-19ワクチン需要は経口治療薬に、シフトされると証券市場では予想されており、開発競争中の経口治療薬のいくつかが年内にも緊急承認されるだろうとの思惑があります。
世界第3位の大手医薬品メーカー米国のメルク社らが開発したモルヌピラビルが、先行して英国に緊急承認申請し、ブランド名「Lagevrio」で11月4日に承認済み
「モルヌピラビルとウェイン・ホールマン博士」
同様な便宜性を持つファイザー社のパクスロビドが、モルヌピラビル承認後に急遽11月5日に公開されましたが、メルク社の株価がなぜかファイザー社の発表の日に急降下。
モルヌピラビルの安全性に疑問があるとの指摘があり、市場はファイザー社の優位を予想しているのでしょう。
*Covid-19の増殖を抑制するウィルス遺伝子の化学物質による他動的な突然変異作用は、DNAに変異作用が及ぶ可能性がありますが、その詳細は双方ともに情報が断片的であり、現段階での安全性評価は困難です。
*ファイザー社の記者会見ではDNAへの波及を質問されましたが、回答はなかったと報道されています。
*In preclinical studies, PF-07321332 (パクスロビドのコードネーム)
did not demonstrate evidence of mutagenic DNA interactions.
*Human cells have a DNA, rather than an RNA genome,
but some laboratory experiments have suggested
that molnupiravir could cause mutations in human DNA as well.
4. 大逆転を果たしたファイザー社と先行メルク社の株価急落
発表されている経口治療薬の中和抗体獲得効果は大規模治験によるものではなく、人造ウィルス、人造抗体などによる実験室での成果や、各所で様々なケースを想定して実施されている小規模な治験による成果です。
双方ともに最終治験が終了し、広く感染者に投与されなければ真価はわかりません。
作用物質の詳細の発表がなければ公平な第三者による安全性評価もできません。
いずれにせよウィルスのスパイクに存在し増殖に必要な、たんぱく質プロテアーゼの機能を阻害する作用機序ですが、阻害の手法がそれぞれ異なります。
5. ファイザー社の救世主となったCovid-19経口治療薬パクスロビド
アメリカのCovid-19報道にゲームチェンジャー(Game changer)という言葉が現れ始めました。
11月5日にファイザー社は開発中のCovid-19経口治療薬パクスロビドの中間報告を急遽発表。
先行して緊急承認申請を英国に提出していたメルク社のモルヌピラビルが前日の11月4日に承認されたからでしょう
治験中のパクスロビドの中間報告は下落を続ける株価対策といわれますが、思惑通りにゲームチェンジャー(Game changer)としてマスメディアに紹介され、株式市場は緊急承認申請したファイザー社を大歓迎。
株価は発表後に今年の最大幅である約11%の急上昇。
時価総額(Market capitalization)も2725.4億ドル(約27兆2.000億円)と最低となった2021年10月18日の2378.4億ドル(約23兆1,670億円)に比べ、半月で約4兆円プラスと、急膨張しました。
経口治療薬は世界ナンバーワン医薬品会社のスイス・ロシュ社も昨年から開発中ですから、いくつかの有力メーカーがこれからも名乗りを上げると思われます。
医薬品は先手必勝が通例ですが、自宅での服用が可能な経口治療薬は、価格や流通網も重要な要素となりますから、どのブランドが優位かは不透明。
作用機序は侵入ウィルス増殖の阻止ですが、その手法、阻止に使用する物質はメーカーごとに異なりますから、安全性の評価はこれからです。
これまでの緊急承認済み治療薬はモノクローナル抗体中心の注射薬、点滴薬であり、施術コストを含めると非常に高いものですが
経口治療薬は診断後の投与に医師、看護師が不要なために、大幅なコストダウンが期待されています。
安全性の高いメーカー品が増えて競争となることを期待しますが、現段階の価格は一回あたり7万円以上といわれ、決して安くはありません。
詳細な調査による鋭い予見性を持つ株式市場が大歓迎したのは、それなりの理由があると思われますが、いずれにせよモルヌピラビルもパクスロビドも治験中。
モルヌピラビルは治験を続けながら発売を開始しています。
双方ともに、遺伝子変異が増殖機能を持つRNAだけでなく、本元のDNAに発生する可能性が否定できないとの指摘があり、安全性の有無を巡ってメディアを賑わせています。
6. 経口治療薬で先行するパクスロビドとモルヌピラビル
パクスロビドとモルヌピラビルは双方ともに治験中であり完成しているわけではありません。
ファイザー社のパクスロビドは有効性が89%というメーカー発表があり、50%といわれるメルク社のモルヌピラビルより市場評価が高かったようです。
ただしファイザー社はパクスロビド摂取と共に、ブースターとして抗HIV薬リトナビル(ritonavir)の同時摂取を
基本としています。
単体投与ならば有効性はモルヌピラビルより高いとは言えず、リトナビルの副作用にも配慮する必要があります。
いずれにせよ、安全性は双方ともに治験中であり、まだ確認できる段階ではありません。
パクスロビド(paxlovid):3CLprotease inhibitor(ファイザー:Pfizer)
コロナウィルスが増殖するために必須なたんぱく質加水分解酵素
3CLprotease( 3C-like protease、3CLpro)の機能を
タンパク分解時(proteolysis)に阻止しますが、噂されるようにDNA遺伝子までを
変異させるかどうかは不明
リトナビル(Ritonavir):
抗HIV薬(CamberPharmaceuticalsなどで、ジェネリックがあります)
パクスロビドの血中濃度(滞在時間を延ばす)維持のブースター。
リトナビルは承認後20年くらいの実績がある抗HIV薬ですが、
死病のエイズ治療薬ですから腎臓、肝臓に強い負担があります。
Covid-19経口治療薬としては10%くらいの投与が予定されているようです。
モルヌピラビル(molnupiravir):
*NHC-mediated inhibitory and mutageniceffects on viral replication(メルク:Merck)
ヒト細胞の受容体に結合するウィルスの結合仲介物質NHCの
遺伝子に突然変異を起こさせて増殖を阻害する
*NHC:N-ヘテロ環状カルベン / N-Heterocyclic Carbene
Human cells have a DNA, rather than an RNA, genome,
but some laboratory experiments have suggested
that molnupiravir could cause mutations in human DNA as well
7. 世界各国政府が経口治療薬予約に狂奔
先行するメルク社のモルヌピラビルは英国で11月4日に緊急承認済み。
パクスロビドの承認時期は不明ですが日本では年内に、緊急承認されるという見方が広がっています。
いずれにせよ治験を兼ねた投与となることはワクチン同様です。
モルヌピラビルもパクスロビドも年内の予定生産量はごくわずかですから、ともに現段階で情報公開した目的はワクチン同様に「予約販売」
新薬開発能力を持たない日本や欧米の富裕国を対象にしており、思惑通りに進んでいますが、予約はアメリカが最優先で、すでにモルヌピラビルを170万回分以上、1100億円以上で予約しています。
*バイデン大統領の誇り高い演説
「We’ve already secured millions of doses」
今回、日本はメルク社のモルヌピラビルを160万パック予約。
契約金額はアメリカより高い?12憶ドル(約1400億円弱)といわれます。
12月中旬には20万パックが治療現場で使用できるように手配されました。
メーカー発表の年内予定生産量はファイザー社が今年は18万パック。
来年前半に2100万パック。
(1パックは1コースの5日分)
2022年度の生産量は5000万パックの予定だそうです。
予約の一部が配給されるのは2022年春ごろからと思われますが、日本が必要全量を得るのは夏ごろになるかもしれません。
日本は他国とは感染状況が全く異なりますから、政府が邦人の不要不急の海外渡航と外国人感染者の入国を制限すれば、大量には必要が無いかもしれません。
不要になっていれば備蓄ということになりますが、それは「うれしい悲鳴」
ワクチンは前政権が国民需要の3倍くらいを、緊急特別承認された3社と購入予約したようですが、売り手市場で各社の言い値は高価なものでした。
今回も先方の言い値が階層別価格(a tiered pricing)なら、高価(一回分700ドルといわれます)となりそうで、限界に近い財政逼迫下で対応する新政府は難しい交渉を強いられるでしょう。
メルク社のモルヌピラビル生産量予想はわかりませんが、すでにジェネリックのメーカーなどでも生産開始しているようですから、
ハードルが高そうな安全性が確保され、承認されれば、すぐにも相当量が入手できるでしょう。