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ケン幸田の世事・雑学閑談(千思万考)

第五十三話:平成28年(2016年) 丙申年を展望する( その1)

中国の経済崩壊で日本が受ける傷は浅い、受け身の対応は禁物…

 

申年 〝サル〟の異名を持った豊臣秀吉のごとく

新年は干支暦で「丙申」陰陽五行説の「陽金」の属性を持つ歳で、暦学・易学の観点から
それらの意味するところを組み合わせてみますと、「成り行き、対処の仕方を誤らなければ、
問題が明るみに出て、その解決策が図られ発展する、意外と良い年」になりそうです。
「丙(ひのえ)は、芽が地上に出て葉が張り出し広がった状態を言い、
明らかで盛んに広がる」意味を持ち、「申(さる)は、果実が熟して固まってゆく様子を言い、
物事が進歩発展し成熟に至る」との意味があるようです。
「陽」は動で外にあり、明るく、変化のエネルギー源となり、「金」は
冷徹、堅固、思慮深い性質で、収穫の象徴となるのだそうです。
以上から、平成28年(2016年)は「諸々の問題が表面化し、問題解決力、
行動力が盛んとなり、支配勢力や主流勢力が入れ替わり、破綻すべきは破綻し、
実るべきものが成熟して行く希望が持てる年」となってほしいものです。
ちなみに、申年生まれで〝サル〟の異名を持った豊臣秀吉は、生来の明るさを武器に、
頭の回転の速さと果敢な行動力、抜け目のない冷徹さと元気の良さで、一挙に成り上がって
天下取りを果たしました。
わが日本国も、日本人の一人一人がこの先人にあやかり、幸楽、健勝の年であってほしいと
願望する次第です。

people gathered outside buildings and vehicles

■「日が沈む西方」に対し、「日がまた昇る東方」

旧年中は欧州の疲弊が表面化し、アメリカの覇権に陰りが見えたのに呼応して、
中東イスラム圏における紛争が激化しテロが世界的に拡散しました。
また、中国による急激かつ際限なき覇権主義の無法な発露が近隣アジア諸国の反目を呼び、
日米豪亜・環太平洋国家群にとっても、もはや無視できない国際問題と化しています。
近世以来の長期にわたる白人による世界支配に取って代わるべき「有色人種」としても、
イスラム暴力主義や、中国の強引なエゴ外交では、次世代リーダーの役割など、
とても務まりそうにありません。
昨年はさらに、欧州唯一の勝ち組・ドイツの経済が下り坂に向かい、
中国経済も夕暮れに向かうなど、世界の政治経済に暗雲が垂れこんだ年でした。

しかしながら、ここへきて米国経済に好転の兆しが見え、日本経済にも微弱ながらも
灯りが点りはじめたことと、TPPの先行き期待感から、「日が沈む西方(中露欧)」に対するに、
東方の米日に「日がまた昇る」可能性が高まってきたように思えます。
しかも、白人世界に最も近い有色人として、文化と民主主義の成熟度を誇り、
自由経済主義の下、産業の成熟度と技術革新の先端を行き、法を順守する国際国家としても、
宗教的中立性を持つわが日本国こそが、このところ対立を強める米中の狭間にあって、
さらには、欧米とアジア・中東の橋頭堡を務めるべき絶好の立ち位置にあると自認し、
行動すべきだと提言致します。
申年の日本は「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿ではなく
「良く観る眼・正しく発言する口・広く聴く耳」を研ぎ澄ませる〝賢いサル〟
に変身したいものです。

 

■内需の足引っ張る〝爆買い〟 AIIB、元のIMF国際通貨化も墓穴に?

わが国にとって、中国覇権主義の自滅は正負の影響を受けますが、まず経済面では
比較的傷が浅くて済みそうです。
中国経済は国営企業がインフラ建設や不動産開発で高度成長を牽引して来ましたが、
過剰生産、過剰在庫を来してバブルが弾けました。
慌てて個人消費への転換を図ったものの、所得の伸び悩みと少子高齢化で消費、
特に内需が急速に成熟化しており、外資の退却、内資の流失も相まって、
いよいよ長期の経済低迷局面に入ったとみられます。
外地旅先での〝爆買い〟も、ネット通販業者による日米欧商品の輸入・宅配も、
そして汚職摘発を逃れるための資金流出も全て外需であり、内需の足を引っ張っています。
インフラ銀行のAIIB、元のIMF国際通貨化、強引な株価や為替管理策…
いずれも「墓穴を掘り、デフレを呼び込むであろう」との国際論評が増えています。
昨今、深入りを避けて来た日本が被る被害は少なくて済みそうです。

 

アジア太平洋諸国の「有志連合」で「中国包囲網」

南シナ海、東シナ海における中国の暴走に、当事者として特に反発を強めるのは、
ベトナムとフィリピン、そしてわが国ですが、ようやく国際的歯止めが掛かってきました。
昨年11月、フィリピンでAPEC経済協力会議が開かれ、引き続きマレーシアで
東アジアサミット(ASEANと日米中など18カ国の首脳が参加)が開催されました。
この2つの国際会議がアジア外交の激しい駆け引きの舞台となった中、特に目立ったのは、
中国の海洋軍事基地拡張を封じ込めようとする米国の動きでした。オバマ大統領は、
フィリピン、豪加日、マレーシア、シンガポール各首脳と次々と会談を重ね、
アジア太平洋諸国による「有志連合」を構築し「中国包囲網」を築こうと呼びかけたのです。
もちろん中国側(習近平主席と李克強首相)も、この連合を分断すべく、
激しい外交戦を展開しましたが、安倍首相が急先鋒となり、中国批判を止めなかったようです。
結果として、ASEAN議長声明と東アジアサミット議長声明は、
併せて中国の人工島埋立てや軍事拠点化停止を求める内容になりました。
中国の外洋拡張封じ込めの火ぶたが切られたのは、西太平洋の海洋安全保障に関し、
うれしいニュースでありました。

そもそも中国が固有の領土領海と主張している海域は、先の大戦でわが国が管理していた
多くの島々や岩礁を含み、敗戦日本が撤退後、沿岸諸国のベトナム、フィリピン、
台湾、インドネシアなどが実効支配を進めた経緯があります。
時を経て、ベトナム戦後に米軍が撤退し、フィリピンが米軍を基地から撤退させた後に
中国が武力で強奪したもので、日米としてはともに、中国による国際法を無視しての
諸島強奪・海洋進出・海域支配の野望を制し、公海の太平を守る義務があるのです。
すでに日本はベトナム・フィリピンなどの海上警備力向上の為、巡視船艇の供与、
警備員教育などの支援を進めております。
今後さらに、この枠組みを広げ、対中国の足並みをそろえることで
「アジア海洋協力」を構築し、自由通航と漁獲の確保、海洋環境保全にも
主導的役割を果たすべく主導し始めています。
米国もついに重い腰を上げ、イージス駆逐艦を中国人工島12海里内へ航行させ、
B52爆撃機2機を同人工島空域付近へ飛行させ、軍事的圧力を加えるに至っております。
中国は孤立へ追い込まれつつあるのです。

 

■譲れない東シナ海・南シナ海の安全 日本の〝海上逆封鎖〟も外交カードに

新年早々、中国はさらに大きな悩みを抱えることとなりました。
まず、オランダのハーグにある国際司法機関「常設仲裁裁判所」でフィリピンによる提訴の
審理が開始されます。
「中国の南シナ海領有権主張と一方的占拠は国際海洋法条約違反」との訴えで、
中国不利との論評が多く、インドネシア、マレーシア、ベトナムも相次ぎ提訴すると
言われております。
中国が国際的司法の場で敗訴を重ねると、国際社会での孤立のみならず、
国内政権の求心力にも大きな負荷を及ぼすのではないか、との国際関係学者らの
見解が聞こえてきます。
また本年は、米国大統領選挙があり、全候補者が、党派を超えてオバマ政権より
厳しい対中国外交・安保政策を明言しており、習政権が対外拡張路線に急ブレーキを掛けない以上は、
米中対立の激化のみならず、孤立無援の中国が蟻地獄に落ちる可能性が高まるとみて良さそうです。
この際、海洋国家日本としても、さらなる責務を全うすべく自信と覚悟を固め、国際法に準拠する中、
国内法を拡充していかねばなりません。
わが国には、7000近くもの離島があり排他的経済水域は447万平方キロメートルもあって
世界で6番目ですが、現在北方四島と竹島が奪われたままで、尖閣諸島も狙われており、
「平和」とは言えない状況下にあります。
万一、南シナ海で中国の軍事基地化が完了し、わが国がシーレーンを失うことになってしまうと、
原油輸入の8割と沿岸国との貿易20兆円強が脅かされます。
もっとも、地政学的に逆の見方をすれば、日本が海上封鎖を強行することで、
中国の食糧、資源など肝要物資の輸送を封じ込めることも可能なのです。
こうしたことも〝外交カード〟になりうるわけで、対中折衝に受け身の弱腰は禁物でしょう。

 

国際外交で存在感が問われる1年 リーダーシップを発揮するチャンスも

日本は近海の豊富な天然資源に恵まれています。百年分の使用に耐えるメタンハイドレートや、
5千兆円にも上る希少金属の鉱床もある上、加工を含めた魚介類も、
やり方次第で自給量を満たすことが可能だそうです。
ただ問題は、海を守り抜く決意と海防実践力にあるのです。中国漁船の度重なる密猟や
わが国への領海侵犯から見ても、漁民は国から訓練され、手当てをもらった
民兵(内陸の貧農が応募)であり、ほかにも、機関銃を搭載した中国海警局の公船が
尖閣領海に侵入したのが、最近確認されています。
従って、沿岸警備の法整備を固め、巡視船の拡充を始め、海上保安庁、
海上自衛隊などの多層的配備、臨機応変的な訓練強化を進めておくことが肝要となりましょう。
一方、対露折衝においても、先方のカードである極東ガス田開発の資金と売却先熱望にうまく対処し、
歯舞・色丹の返還に留まらず、国後・択捉の経済特区を、長期戦略でわが国へと従属させるべく、
智恵を絞った対露外交が望まれます。

本年は、わが国が9年ぶりに議長国を務める「伊勢志摩サミット」開催の年でもあります。
国連安保理で11回目の非常任理事国任期を務めるなど、日本が国際外交面で
存在感が問われるとともに、リーダーシップを発揮するチャンスが巡ってきます。
加えて、集団的自衛権行使可決により日米安保再強化と国際的安保が増強され、
TPPの進展、アジア太平洋における中国対峙の
先鋒役も担うことになるだけに、いよいよ自覚・自尊を固めて、
「世界から信任され畏敬される日本」へと、新しく力強い歩みを始める良い年にしたいものです。

 

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