式年遷宮の翌年は「お蔭年」とされ、特別のご利益を授かるというので、初詣は伊勢神宮へ行ってきました。
まず、衣食住をはじめ、全産業を司る神である「豊受大御神」を祀る外宮に、
次いで、日本人の総氏神である「天照坐皇大御神」が祀られる内宮に参拝致しました。
深い森に包まれる参道に初日が差し込む神々しく清澄な空気と総ヒノキ造りの御正宮は、
有史1300年の日本国の伝統(日本人の心のふるさと、未来への道しるべ)を感じさせ、
心は澄み渡り、身も引き締まる雰囲気を醸し出しておりました。
お参りの後は、江戸時代の町並みが軒を連ねる「おはらい町」と賑わいを再現した「おかげ横丁」の
散策と飲食も楽しみました。
因みに参拝客は、通年平均では860万人に比し、昨年は遷宮と景気再興の所為もあり、
1500万人を突破したそうで、「お蔭参り」の本年は2千万人突破も見込まれるそうです。
「一生に一度は“お伊勢参り”」と駆けつける多くの日本人参拝客に交じって、
紅毛碧眼の方たちもかなり見かけたし、アジア系の言葉も多く耳にしたので、
我々が西欧や中東へ観光旅行をすれば、大聖堂やモスクに案内されるように、
今後オリンピックに向けて、外人観光客の伊勢参りも期待されそうです。
ところで、20年ごとに繰り返される遷宮のことは、外宮の表参道そば、
玉池にある資料館「せんぐう館」の展示や解説で学習できます。
神明造りの社殿の縮尺模型が展示され、その造営の主たる御用材として、木目の美しい檜材、すなわち根の張り、枝振りがよく、直立の2百年育った檜が20万本も必要とされるそうで、計算上は毎年1万本以上を植樹して
未来に備えておく必要があるのだそうです。
なお現状では伊勢の森から適材が4万本程度しか産出できないので、長野他、全国各地から良質の檜を集荷してくるようです。
もちろん、こうした優良な御用材は、20年過ぎた旧殿(3月まで併置された後)が解体され、
総称お伊勢さんの、別宮、摂社、末社、所管社含む計125社に転用され、
さらに20年後(都合40年後)も全国の系列宮社へと再転用され、
60年で廃材(もちろん神社以外の用途に転用)とされるそうです。
(因みに昨年遷宮を終えた出雲大社の場合、60年遷宮ですから、
御用材の寿命は古来60年とされてきたことが分かります。)
日本人の還暦祝いの風習とも合致するものです。
遷宮は先人が営々と伝えてきたものを国家の事業として継承することで、
国がよみがえり民族が力を得て、次世代へと生き抜くことが出来るように、伝統を積み重ね、
さらに高めることになる訳で、この儀式は世界で類を見ない日本独特の伝承の姿だと言えます。
せんぐう館には色々な展示があり、殊に「ご装束神宝」が714種1576点もあって、
木工・金工・漆工・染色など全国46万人に及ぶ各世代の伝統工芸職人の粋である至高の形と風合いを、
つぶさにみられる匠の技には感嘆させられます。
こうした技の継承にも、設計図面を含め20年ごとに“原初を繰り返すことで、
永遠に継承する”のが必須なことは良く分かります。延喜式作法に基づく神宮御料(捧げもの)は、
馬具や神官の装束、各種調度品などは当代を代表する最高レベルの匠が、20年後には交代し、
次世代へとスムースに伝承されることを前提とした“万全の記憶装置”であると言えるでしょう。
伊勢神宮が鎮座する三重県は「うまし国・日本人の背骨」と古くから呼ばれ、
美しい自然と豊かな実りに恵まれており、「気」が集まる場所が沢山あるそうです。
大和の国を治めた奈良から見て、太陽が昇る「真東」の伊勢に皇家の氏神を祀ることになったのは
歴史の必然だったのでしょう。ことに、バブルが弾けた後、日本経済が低迷を続けた上に、
民主党の稚拙な内政がさらなる国力低下を招き、ルーピー外交が日米関係を弱化させた上、
イラ菅屈辱外交に乗じた中韓の反日攻勢を許してしまい金縛り状態だった日本国に、
救国主・安倍内閣が登場し、経済がようやく上向きに転じ、弱腰外交が積極的平和外交に転じることで、
中韓包囲網諸国群を引きつけ、親日国を増やし始めたその年が遷宮と重なったことに
大いなる意義を感じる次第です。
大震災からの復興とオリンピック開催に向けても、今こそ日本人が心を合わせ、
未来へ向かって立ち上がる好機であるからして、母国の聖地から、気のパワーを頂けることは、
とても大切なことだと思います。
しかも、日本を取り巻く厳しい外交に対処するにも、外国人観光客をもてなすためにも、
まずは我々自身が日本国の源流と脈々と続く伝統を熟知しなければなりません。
伊勢を語るとき、世界の最長寿国・日本を誇るとき、欠かせないのが「天皇」で、
「国際儀礼(プロトコル)」によると、海外で各国の代表(国王、元首、大統領、首相)が一堂に会する時、
最上席に案内されるのが“世界最上級身分”と議定されている我が天皇であることを、
多くの日本人にもっと知っておいて頂きたいし、外に向けて誇りとすべきでしょう。
フランスの作家で、ドゴール政権の文化相を長く務めたアンドレ・マルローは自著各編で
「21世紀は霊性の時代となろう。
霊性の根源には神話があり、それは歴史の一面を物語っている。
世界の神話が現代なお生きているのが日本であり、日本とは、それ自体、そのものの国で、
他国の影響を吸収仕切って、連綿たる一個の超越性である。
霊性の根源に万世一系の天皇制がある。
これは歴代天皇の連続性であるのみならず、日本文化の継続性の保証でもあるのに、
戦後日本はそのことを忘却してしまった。
しかし、霊性の時代が、今や忘却の渕から日本の真髄を取り戻すことを要請している。
また文化は水平的に見るのではなく、垂直的に見るべきだ」といった趣旨のことを書いています。
確かに、中国や朝鮮文化の影響を過大に語る一部日本の文化人には大きな誤解があるように思えます。
知る限り、英仏独の文化人、史家には、後生大事にギリシャ・ローマを奉る人など皆無であり、
米国の識者がイギリスを無暗に持て囃す事例を耳目にしたことなどありません。
日本文化・文明と日本人は、中華文明や長年に亘りその属国で有り続けた朝鮮文明とは全く異質であり、
むしろアジアの中でも、もっとも遠い存在であると言えます。
日本人の氏神、天照大御神に思いを致すのは今でしょうか。
スイスの心理学者グスタフ・ユングも「キリスト教中心の西洋文明の終末は20世紀末から21世紀初頭にかけて
到来する。
そして次の文明は、一神教や独裁専制ではなく、霊性の支配する時代となるであろう」と期せずして
マルローと同じ予言をしております。
要するに、カネ・モノに執着する物質依存世界から、人間の理性と精神世界を重視する義と捉えるならば、
超大国アメリカや金と軍事力で餓鬼道に陥った中国を痛烈に批判・否定しているように思えます。
それに比して、多神教日本は、古来山や川に霊性を感じ、自然を畏れ、神を尊ぶ心を抱いてきた訳で、
その代表が伊勢の森だったと言えるのです。
考えるに、人類文化の危機は画一化にあり、文明が衝突するのではなく、
文明に対する無知が紛争の根源となることを、地球民はもっと真剣に深く思い致すことが大切ではないでしょうか。
思考のプロセスを自省し、他にかぶれたり迎合させられたり、徒に自虐的になることから
一歩距離を置いて、確信されてきたものを再吟味し、忘れ去っていた古き良きものへの思いをいたし、
一方で他民族との交流に置いては、異質なもの・新たなものを受容し合うことこそ
文明間の対話の重要性だろうかと思います。
国家的文化戦略は、長期構想として構築し、粘り強く世界へ向けて発信してゆくことが最重要です。
世界的有識者の言説を待つまでもなく、当に21世紀が霊性の時代へと向かうならば、
日本人としても1300年間継承されてきた伝統精神を矜恃し、発信・交流してゆくことが、
自らの背骨を正すとともに、世界平和への貢献に大いに資することになるものと確信致します。
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