1.食生活で差が出る認知力低減と脳萎縮
人によって大きな差がある加齢と健康。
認知症やアルツハイマーの原因となる脳の委縮(cognitive ability, brain shrinkage)は
年齢だけではなく、食生活(Diet, nutrient levels )で大きな差がでることを突き止めた
オレゴン州の研究者らがいます。
調査研究はオレゴン健康科学大学(Oregon Health and Science University:ポートランド)と
オレゴン州立大学リーナス・ポーリング研究所の学者ら。
主任研究者はオレゴン州立大学ライナス(リーナス)・ポーリング(the Linus Pauling Institute)の
マレット・トレーバー(Maret Traber)博士。
オメガ3脂肪酸とビタミンB、C、D 、E の血中濃度がハイレベルな人は、精神的鋭敏さを持ち、
加齢による脳委縮が最少で済むが、これらの栄養素が少ない食生活をする(高齢者)は
正反対の結果となる実験結果を今1月の米国神経学会(the American Academy of Neurology)の
機関誌「神経:Neurology 」に発表しました。
2.ライナス(リーナス)・ポーリング調査の概略
調査対象となった高齢者は健全な記憶能力と精神を持ち、平均的なアメリカ式食生活を送る男女104名。
まだ拡大調査を要する小規模調査の段階で、結論は早計ですが、87歳平均の高齢者104名が
対象となっていること、30種類の栄養素の血中濃度と脳の量を調べたことは、これまでにない試みです。
これまでのアルツハイマーの疫学も栄養素の重要な役割を示唆はしますが、食物アンケートなどは
総花的でかなり不正確なデータに基づく分析や単品の栄養素検査がほとんど。
広範囲な種類の栄養素を血中濃度測定で得た成果は今回が初めてで、
新たな発見に繋がったとトレーバー博士らは自負。
天然のビタミンB, C, D, Eは魚油やフルーツ、野菜に多いビタミンですが調査は
あくまでも天然に限っています。(研究者らはバイオなど化学合成で得られた
魚油成分やビタミンの効能は天然とは区別しています)
調査では栄養素の血中濃度検査に加え、内42名はMRIで脳の量をスキャンしています。
3.マレット・トレーバー(Maret Traber)博士の報告
- 適正な認識と脳のサイズ は高レベルな海産物摂取とビタミンB、C、D、E摂取の
二つによって得られる。 - もっとも悪い認知症動作を与える食生活はマーガリン、ファーストフード摂取や
揚げたり(高温で)焼いたりして発生したトランス脂肪酸過多など不健康な食事をすること。 - 栄養素の血中濃度は正しい食生活に対する欠陥や栄養素吸収の問題点を指摘するのに役立った
- 年齢、性別、教育レベル、喫煙、飲酒、血圧、ボディーマス指標などなどを
生活習慣別、人口統計学的に分析した。 - 一般的に精神行動パターンは年齢や教育によるが、栄養状態が記憶力、思考力に17%くらい、
脳のサイズに37%関与することが判明。 - 食生活の相違による認知力の変化は多分、脳のサイズ、心筋機能にインパクトを与える。
調査結果の報告では脳萎縮の原因として栄養素不足ばかりでなくトランス脂肪酸の
摂食を挙げています。
米国ではFDA(食品医薬品局)主導で5年前より食品ラベルへの表示が徹底され、
消費者が回避することが可能になっていますが、
バルクで食品を購入する事業者向けまでは徹底していませんから、外食産業向けにはザル法でした。
2012年になり約3千万人が対象となる児童給食用からトランス脂肪酸を排除する方向性も
打ち出されました。
日本ではいまだにラベル表示も未定ですが給食用だけは「米ぬか油」使用を推奨しています。
博士らは新年にあたり食生活を改善を誓うなら果物と野菜をたくさん食べることと結んでいます。
初版:2012年01月27日