煮ものや、味噌作りで長時間大豆を煮たことがある人は
上部に吹き出てくる灰汁(あく:大豆は白く密度の高い泡)がいかに大量かをご存知でしょう。
繰り返し除去しなければならない灰汁の多さは尋常でありませんが
それこそ大豆が他の豆に較べ、優れた健康増進機能を持つと同時に
調理方法、摂食量を誤ると凶器にもなる証。
医薬品の有害性(副作用)に慣れてしまっている消費者にはサプリメントが
まずは安全性を第一に設計するということに無関心な人がいます。
一般的には医薬品の副作用を避けたいために保険適用の無い高価な天然原料の
サプリメントを選んでいるはずですが、食品とはいえ即効性を求めて
医薬品のように大量の有効物質を摂取するのは危険です。
わずかな救いは天然原料の多くには毒性を緩和する拮抗物質が含まれていることですが、
副作用はじわじわと忍び寄るかのように何十年後かにも発症してきますから厄介です。
1.大豆が持つ物質の功罪
10数年前の米国では大豆製品がフィーバー。
女性の更年期障害の軽減、骨粗鬆症予防、骨密度上昇、乳ガン予防など
に著効を示すといわれ、様々な大豆製品が争うように出現。
豆乳を利用したお菓子や大豆ハンバーグなどまでが作られました。
有害性が認知されるようになるまでは大いに推奨されていた大豆ですが
危険性を認めたくない業界の激しい抵抗を乗り越えてブームが去ったのは何よりです。
大豆の危険物質は消化器、免疫システム、甲状腺を損傷します。
また性ホルモン異常が引き起こされることにより、
生殖機能障害、子宮内膜症、性欲減退、ED、痴ほう症などの原因となるといわれます。
イソフラボン(ゲ二ステイン)がチロシン・キナーゼを阻害することにより
細胞エネルギーを低下させ脳の発育不全、脳の老化、髪の毛の発毛率が大幅に低下を招く
という報告もあります。
チロシン・キナーゼはタンパク質のチロシンにリン酸を結合させる酵素。
細胞分裂に重要な働きをしますが、反面、変異によりガン細胞を増殖させることも
知られています。
2.大豆ゲ二ステイン(大豆イソフラボン)の功罪
大豆の功罪を代表する物質でよく知られるものに(生大豆の)ゲ二スチン(genistin)と
(発酵などにより)糖結合が分離した(アグリコン:aglycone)
ゲニステイン(genistein:大豆イソフラボン)があります。
大豆以外で多量に含まれるのは葛(くず:Pueraria lobata )が有名です。
大豆は発酵させるとゲニステインに変化しますが、ゲ二スチンよりゲニステインに変化すると
含有量が大幅に減少します。とはいえ皆無になるわけではありません。
発酵大豆が更年期障害や骨粗鬆症などに有用といわれるのは適量摂食の範囲に限られます。
日常的な摂食量ならば疫学的にも有用といわれますが、サプリメントや大豆紛、大豆加工食品などで
大量摂取してはゲニステインも危険物質となります。
ゲ二スチンとゲニステインは双方に甲状腺ホルモンの生成を阻害する作用があるからです。
また後述のファイトアレキシンの一つであるフィチン酸塩が、ゲニステインによる
甲状腺ホルモンの生成阻害作用をさらに加速させます。
フィチン酸塩が亜鉛、銅と結合(キレート)するために甲状腺ホルモンの分泌に必要な
ミネラルが不足するからです。
またゲニステインは、血管が腫瘍を作る速度を遅らせ、それが抗がん作用となると
言われていましたが、正常な血管に必要な作用まで損なうために、かえって癌になるという
有力な説もあります。
ゲ二ステインの過剰摂取により血管の重要機能である酸素運搬を阻害するからです。
大豆のもう一つの功罪を持つ物質はファイトアレキシンによるものです。
植物が紫外線、放射線、有害微生物(ウィルス、真菌、バクテリアなど)などから身を護る
物質群ですが、ファイトアレキシンには有用な物質、危険な物質があります。
大豆のファイトアレキシンで知られている有害物質にはフィチン酸塩、酵素阻害物質、
ゴイトロゲン(甲状腺腫誘発物質)があります(後述)
3.大豆の過剰摂食は内分泌機能を損傷させる
かっては、大豆を有用な主要食材として調理人、管理栄養士が解毒の必要性を教えずに
乳児に大豆フォーミュラ(乳児用調合ミルク)や更年期障害の女性に煮豆などを
推奨することが少なくありませんでした。
また有用なタンパク質源として菜食主義者がサラダなどで大量に摂食していました。
いずれの場合もこの数十年間に多くの内分泌機能損傷の被害疑いや被害が報告されて、
遅ればせながら大豆の有害性が広く認識されるようになりました。
中国人、日本人の平均的発酵大豆摂食量は約30g/日といわれます
(米国人研究者による調査)。
アジアで中国系人の消費量が多いのは味噌、醤油よりバラエティーが豊富な
豆腐加工食品。
実際には日本人と異なりかなり消費量が多いのではというのが実感。
(米国の大豆製品には20~60mg/食のゲニステインが含まれているという調査があります)
4.先人が築いてきた大豆解毒の知恵
大豆の食用には5,000年を超える歴史があるといわれますが
紀元前には、すでに有用性、有害性が理解されて解毒してから摂食していたようです。
豆類調理の原則となっている「水浸し」「加熱」「海水(にがり)添加」で
有害性の大部分が消滅することや、大幅に減少するのが発酵であることが
すでに知られており、味噌、納豆、テンペが発明されたといわれます。
5.甲状腺肥大を招き、甲状腺ホルモンの生成を阻害する大豆のゴイトロゲン
大豆に豊富なゴイトロゲン(Goitrogen)は最も警戒すべき物質の一つ。
ヨウ素の取り込みを阻害する物質です。
ゴイトロゲンは甲状腺肥大(甲状腺腫:goiter)の形成や甲状腺ホルモンの生成を阻害するとも
いわれる物質。
甲状腺ホルモン機能の低下は細胞内ミトコンドリアの代謝機能を低下させ
ガンになりやすい体質となります。
大豆以外に甲状腺機能を低下させる食品にはアマの種(チオシアネート)やキャッサバが著名。
アブラナ属の野菜、タケノコ、ナシ、桃なども甲状腺機能を低下させる食品として知られています。
6.ミネラル不足を促進する大豆のフィチン酸塩
フィチン酸( phytate)は穀物や豆類に含まれる生体物質。
鉄分や亜鉛を吸収するためにバラエティーの無い食生活の場合(貧しい途上国など)
ミネラル不足を引き起こすことがありますが、先進国民はミネラル不足が
日常的にはほとんどありません。(軟水で生活する日本民族はカルシウムが不足しています)
したがって米ぬかなどから適量に摂取するならば大腸がんなど各種のガン予防に
有用物質ともいわれます。
豆類の中でも特に大豆に高含有されているのが生体物質のフィチン酸塩(phytic acid)。
水に浸すことにより大半が消滅するといわれますが
大豆紛、全大豆、豆乳などには高水準に含有されるために、大量摂食した場合は
ミネラル不足になるなどの有害面が多いといわれます。
大豆大量摂食によるミネラル吸収阻害を防ぐために、サプリメントでミネラルを
摂取することはナンセンス。海藻、野菜など食材からでなければ役に立ちません。
7.消化酵素を阻害する大豆のトリプシンインヒビター
トリプシンインヒビター(trypsin inhibitor)は
たんぱく質分解酵素トリプシンを阻害する物質。
生の大豆に含まれます。
消化酵素を阻害するために消化機能障害の原因となります。
消化機能が衰えてる方が注意すべき大豆の有害性です。
発酵により消滅させることが出来ますから味噌、醤油、テンペ、納豆などは
問題ありません。