トランス脂肪酸撲滅研究会
乃木生薬研究所は、2000年より
トランス脂肪酸の排除に
取り組んでいます。
現代の工業化された加工食品により急増する脳卒中、心筋梗塞など。
加工食品の40%が使用する植物性食用油、油脂のトランス脂肪酸が主因の一つと捉えられています。
その対策に日夜努力する各国の研究者たち。
オピニオンリーダーといえるのがハーバード大学公衆衛生大学院です。
パン作りに必須なバターは超高価格。日本の畜産業の規模が小さいのがネックです.
輸入をすれば関税、課徴金により、仕入れ価格は350%を超える高額.
ほとんどのパン類はバターの代わりにトランス脂肪酸豊富なマーガリンを使用します.
1.法制定後10年、いまだに加工食品産業に深く侵入し続けているトランス脂肪酸
米国では2003年より3年間の猶予期間をおいて
2006 年にトランス脂肪酸量の表示義務が法制化されました。
ところが近年になり心臓病、肥満のリスクを加速させることが明らかになっているにもかかわらず
2006年の表示義務法制化時にニューヨーク市がレストランで使用することを禁じたくらい。
今年(2013年)でトランス脂肪酸追放が始まってほぼ10年が過ぎていますが、
その後の各加工食品メーカーの減少実績進行度について公衆衛生研究所が追跡調査。
結論は「一食あたり0.5グラム以下ならばゼロ表示できる」暫定的な行政の妥協が
改善を中座させ、ゼロ表示商品は増えたが、毎食の合計トランス脂肪酸は危険な数字が
続いている」ことを指摘しています。
2.慢性疾患予防誌に掲載されたハーバード大学公衆衛生大学院の報告
ハーバード大学公衆衛生大学院が2013年5月23日に発表された報告は
「Trans Fats Still Sneaking into Food Supply:加工食品産業に深く侵入し続けているトランス脂肪酸」。
「トランス脂肪酸の減少は進んでいるが、いまだに大手販売会社が扱う加工食品には
トランス脂肪酸が広く潜航しており、満足すべき結果が出ていない」と指摘しています。
研究者らは過渡的に「一食あたり0.5グラム以下ならばゼロ表示できる」暫定猶予を
利用(悪用)した加工食品が絶えないことに危惧。
「0.5グラム以下との方針は完全排除に猶予期間を与えているだけで、少量が安全というわけではない」
と警告しています。
この報告は国立心臓、肺、血液研究所( National Heart Lung and Blood Institute)が
サポーターとなっており、オンラインの「慢性疾患予防:Preventing Chronic Disease.」最新号に
掲載されました。
3.調査で判明したトランス脂肪酸減少企業の現状
ハーバード大学公衆衛生大学院の調査では2007年以来トランス脂肪酸を含有する加工食品は
レシピを変更し削減に努力してきたことが理解できたとのこと。
ところが、最近では削減量が当初の10分の1くらいに減少。
いまだに多くの食品が有害植物性食用油を含有していることも判明しました。
研究者達によればトランス脂肪酸が様々な病の原因となることが判明するにつれ
マジョリティーの加工食品会社はその含有率を下げてきましたが、
完全に追放したのはその中でわずか半分。
アジア諸国はトランス脂肪酸に無関心.安価な大型ボトルの植物性食用油
を大量に消費する.
健康的な伝統食から米国式工業化加工食品に移行し、心臓血管病
が急増している.(マレーシアのスーパーマーケット)
4.悪用されている暫定的な猶予政策
ハーバード大学公衆衛生大学院のダニエル・モツァファリアン(Dariush Mozaffarian )博士らによれば、
今回調査の対象とした270の加工食品を分析したところ、
66%が2007年から2011年にトランス脂肪酸を減じていました。
問題なのは減少させた食品の大多数82%が栄養表示ラベルに
トランス脂肪酸0gと表示していますが、
元凶である「部分水素添加した植物性食用油」を
完全に排除していたのはそのまた半分。
過渡期的に許された1食あたり0.5g以下ならば0g表示ができることが
悪用されていると指摘しています。
イェール・グリフィン予防研究センターの役員であるデービッド・カッツ博士によれば、
「生産者は、一時は減じたものの完全排除はしていない」
「FDAのルールによれば1食あたり0.5g以下のトランス脂肪酸ならば、(たとえ)製品に
トランス脂肪酸含有食用油を使用していても0gとパッケージや成分表のどこにでも表示できる」
「私はこのレポートに、排除に関する進行状態が報告されているのがうれしいが、
本音を言えばそんなに(排除できた商品が)大きくなかったことに驚いている」
「もちろん(表示義務があるので)我々はそのような製品購入を拒絶できるが」
大部分のトランス脂肪酸の根源は工業生産された植物性食用油。
研究者によれば「工業化によって植物性油は半固形油脂になり加工食品業界には使いやすい油に変質、
これが危険な食用油を20世紀に急増させた」と断じています。
トランス脂肪酸の少ない新鮮な植物油に配慮した揚げ物ならば揚げ温度を
170度くらいに設定して、トランス脂肪酸の有害性を最小にすることが
できます。
5.今回の調査対象は加工食品製造、販売会社270社
今回の調査対象になった270の加工食品は米国を代表する食品加工会社、販売会社である
ゼネラルミルス(General Mills)
ケロッグ( Kellogg Company)
ハインツ( Heinz)
コンアグラ(コナグラ:ConAgra)
セーフウェイ(Safeway)
ジャイアント(Giant)
キャンベルスープ(Campbell Soup)
サーラリー(サラリー:Sara Lee)
ウォルマート (Walmar)
などを含めた販売量、生産量の多い企業から選定しています。
2011年までにこれら企業が製造または販売する加工食品の66%が
トランス脂肪酸のレベルを1食あたり1.5g減少させました。
これは全体含有量の78%に相当します。
仕様変更でトランス脂肪酸を減少させた加工食品の82%は減少量が一食当たり0.5g。
しかしながら半分の食品はいまだにトランス脂肪酸を作る水素部分添加の食用油を
使用していることが解りました。
6.食品あたりが少量でも複数を摂食すれば合計では危険な数字
ゼロトランス脂肪酸と表示されれば、トランス脂肪酸は排除されていると
消費者は楽観的に考えます。
疑うことなく消費者がこれら少量含有(といわれる)食品を複数食すれば、、
(少量でも安全と言えないトランス脂肪酸の)合計量は当然危険な量。
少量と言えども排除すべきなのは言うまでもありません。
研究者らは「生産者がいまだに売り、そして消費者が汚染された食品を買う。
トランス脂肪酸と健康被害の関係を考えれば、食品はいくら減少させたかを表示するべきであり、
消費者はトランス脂肪酸のすべての危険性を認識し代替品の知識を得るべき」と警告します。
調査対象の中にはほとんど減少させていない商品もいまだに在ります。
2007 年から2011年までに調査した270商品の平均的な減少率は49%。
一食当たり1.9gから0.9g。
ほとんどは0.5g以下を目標としたレシピの改定によるものです。
ところが2007年から2008年は30.3%を減少させたトランス脂肪酸含有量が
2008年から2010年では12.1%にダウン。
2010年から2011年ではなんと3.4%まで低下しています。
大きな理由は取り組む企業が少なくなり、改善商品が減少していることでしょう。
フレンチフライ、アイスクリーム、ドーナッツなどは改善が見られますが、
ポップコーン、パイ、マーガリン、ロールパンなどは依然1食あたり1.5g以上の
トランス脂肪酸が含有されていました。
(日本で売られるマヨネーズがいまだに1.5g以上)
ハーバード大学公衆衛生大学院のモザファリアン(Mozaffarian)博士は
「改善は技術革新により、やろうと思えばできる」「少量でも有害なのは明らか」
「企業はより努力を続け、減少から排除の努力をすべき」と結んでいます。
(解説)
現在は一番安価な減少方法が(新規開発された)遺伝子組み換えのキャノーラを使用することで、
米国では最も普及しています。
ところが新キャノーラでは1食あたり0.5g以下の基準は満たせても完全排除ができません。
研究者らの意図は「部分水素添加した植物性食用油」を完全に排除すべきということでしょう。
ヤシ油(パームオイル)は飽和脂肪酸ゆえにトランス脂肪酸はゼロですが、
発ガンが疑われる成分を含有するために使用が懸念されています。
企業側としてはコスト増が最大の悩みです。