横綱が全て欠場し大関も複数が欠場している2018年の大相撲九州場所。
2021年も同様でした。
筋肉質の関取が少なくなり、いわゆる肥満体のオンパレード。
プロ、アマを問わず日本人スポーツ選手が安易な合成アミノ酸の服用で筋力増強、
体格改良に取り組む風潮により痛めた腎臓による怪我の頻発に
繋がっているのではと危惧されています。
腎不全は筋肉、骨に大きな影響を与え、機能を阻害します。
すでにアメリカのプロスポーツ選手の多くが合成アミノ酸摂取を中止しており
2021年のスーパーボウル(アメリカンフットボール)出場選手が二回りといえるほど
小さくなっていたのが話題となったくらいです。
100年くらい前は150センチ、40キロ台が標準だった日本人ですから、
欧米のコーカシアンと対等に戦うには肉体的ハンディが非常に大きいのは
理解できますが、危険を承知のプロ選手はともかく、アマチュアが活躍できるのは
一瞬ともいえる短期間。
必要悪のプロ選手の模倣は危険です。
合成アミノ酸の過剰摂取は医薬品過剰摂取同様に「腎不全」の大きなリスク・ファクター。
悪化させたら回復が難しく、一生涯後悔することになります。
長寿社会の勝ち組となるには(その46)(その19改訂版): 危険なアミノ酸バランスの崩壊: 継続的合成アミノ酸摂取と医薬品による腎臓障害の多発
1. 腎臓の認識を変えたエリスロポエチンの発見
慢性腎不全は悪化すると修復が不可能となります。
透析が必須となれば生活の質が低下し、最終的に多臓器不全とあいまいな
呼び名で終末となっていきます。
悪しきことと知りながらスポーツ選手が合成アミノ酸の服用で筋力増強、
体格改善に安易に取り組む風潮は止めなければなりません。
腎臓が寿命を決定し、「肝腎連関」という言葉が生まれたのは古いことではありません。
腎臓機能の研究は1977年に骨へのメッセージ・ホルモンの
エリスロポエチン(EPO:erythropoietin:赤血球増多因子)が精製されてから
飛躍的に進歩しました。
発見したのは大阪大学の宮家隆次博士(みやけ)らで、1985年には遺伝子のクローニングに
成功しましたが、ハードルが高かった医薬品の製造には至りませんでした。
エリスロポエチンはその後の実用化研究にシカゴ大学の協力を得たことで宮家隆次博士の
思惑とは 異なる方向に進展してしまいました。
医薬品の特許は米国のベンチャー企業アムジェン(Amgen inc)が取得。
特許を得たアムジェンはエリスロポエチン製剤をベースに、今やタケダを凌ぐ大企業。
いつもながら悲しい話です。
その後、腎臓は人体各部位を繋げるネットワークの中心であることが次々と解明。
慢性化する生活習慣病に深く関わり、長寿を決定する臓器として体中にメッセージを
発信、受信していることは、いまや医学界の共通認識。
現在は様々な医薬品開発に必要な相関の作用機序発見が競われています。
2. 腎性貧血は原因究明が最重要。エリスロポエチン投与の功罪
顔色が悪くなり、息切れ、めまいが顕著な貧血の原因は様々です。
青春期の女性ならばともかく、中高年となると、より掘り下げた原因究明が
必要です。
生活習慣病やがん治療で継続的投薬が続くと腎臓障害が発生することが
少なく在りません、というより高い確率でです。。
一般的な検診で顔色が悪い、クレアチニン値が異常を示した等で
鉄分補給を短絡的に考えるのは危険です。
腎臓障害発生の原因究明が必要であり、元を断つ必要があります。
鉄分は造血に必須ですが一般的な食生活で不足することは稀。
鉄分の過剰は肝臓などに不具合を起こします。
造血に必須のホルモンであるエリスロポエチン(erythropoietin:EPO)は
腎機能の低下とともに産生量が不十分となり腎性貧血を引き起こします。
素人判断ではなく、専門家による対策が必要ですが、腎機能に詳しく、
投薬に慎重な専門病院で精密検査を受けて指示に従うことです。
赤血球を増やすエリスロポエチン製剤は効果の高い薬ですが急性高血圧による
脳卒中、心筋梗塞の危険性が否めません。
特に血栓が出来やすくなるCOVID-19感染者への投与は避けるべきでしょう。
初期の腎臓障害、急性腎臓疾患は投薬を控え、食生活や生活習慣で一酸化窒素(NO)の合成を
図ることで改善が得られます。
腎臓機能の低下は全身の血管内皮の一酸化窒素合成(NO)機能を低下させるからです。
3.合成システインは腎臓を害し、肺疾患や心臓病に双方向関与する
Nアセチルシステイン(N-acetylcysteine)と呼ばれるアミノ酸のシステイン(cysteine)
美白効果を期待して肉類経由の食品からでなく、合成システインを大量摂取する女性が
少なくないといわれます。
大量摂取は、ある種の化学物質を生成し、必要量の酸素取入れを阻害します。
腎臓が機能発揮するには大量の酸素が必要です。
腎臓は酸素不足により機能が低下、また心臓から 血液を送り出す血管系が
狭まるために、肺の血圧を高め、肺疾患(Pulmonary Disease)や
心臓肥大(swelling)にリンクするともいわれています。
4.合成システインはインシュリンの糖代謝を妨げる
インスリンは、グリコーゲン合成酵素(glycogen synthase)を活性化させ、
グリコーゲン合成を促進させますが、合成システイン(Cysteine)はその機能を
失効させます。
糖尿病疾患や予備軍に危険なアミノ酸として知られる合成システインは
インスリン細胞を変形させて糖代謝機能を失わせるといわれます。
また他の慢性疾患で投薬されている方は腎臓、肝臓負担が大きくなっていますから
アミノ酸の合成システインの摂取は避けるべきといわれます。
健康不調の有無にかかわらず摂取は直ちにやめるべきでしょう。
5.合成アミノ酸によるカルシウム損失と骨粗鬆症(Osteoporosis)
“American Journal of Clinical Nutrition” 誌によれば、合成タンパク質や
合成アミノ酸サプリメントの摂取はカルシウム損失の重大なリスクファクターとなる
信頼すべき研究があるそうです。
「合成アミノ酸により腎臓機能が害されてカルシウム吸収に
必要な機能(bone resorption)が失われ骨粗しょう症(osteoporosis)の原因となる」
6.合成アミノ酸を常用しているアスリートの腎臓機能障害
筋力増強のために、しばしばアミノ酸を常用しているアスリートは
腎臓機能障害を発症している実例が多いそうです。
合成アミノ酸は摂食の歴史が半世紀を超えていますが、60年くらいでは
安全性、安全摂取量の結論が出せる段階ではありません。
健康人でも、合成アミノ酸の摂取を3か月以上連続で続けるべきでない
というのが信頼すべき定説となっています。
アスリートには肉類、魚類などのたんぱく質摂取を中心に均整の取れた食生活、
適正な負荷を筋肉にかけたウェイトトレーニングが推奨されています。
ただしシステインは食材からの天然アミノ酸でも過剰摂取は動脈硬化などの
原因となります。
動脈硬化リスクを増幅する過剰ホモシステイン 危険性を低減させるビタミンB群とは
7.イチロー選手が筋肉トレーニングを廃止した理由
アメリカのメジャーリーグベースボール(MLB)で永年活躍を続けるイチロー選手。
2016年のシーズン後半からは一部筋肉を増強するトレーニングをやめたそうです。
一部を増強することで全体のバランスが崩れるために期待されたパワーを得るどころか
悪影響が目立ってきたからとのこと。
これはアミノ酸もバランスが重要なことに通じます。
イチロー選手は合成アミノ酸サプリメントの有害性が警告されたころに中止しているようですが
合成アミノ酸サプリメントはアスリートが筋肉に十分なグリコーゲンを蓄えるための
糖質合成(incorporate enough carbohydrates )を困難にします。
肉類が大好きなイチロー選手は筋力に必要なアミノ酸量は食事で十分摂取しています。
もともとアメリカのアスリートに合成アミノ酸の補給をする人は少なく、ダルビッシュ、
田中マー君などパワー不足の日本人や韓国人選手が危険を指摘されながらも愛用しているといわれます。
特にプロゴルフ界の選手には男女ともに常用者が多いといわれます。
これはプロ選手としての必要悪と捉えるべきでしょう。
- 2019年には田中マー君もダルビッシュ選手もアミノ酸摂取を中止したそうです。
田中マー君は日本でプレーするようになった2021年には一回り小さくなって登場しています。
肉食人種のアメリカ選手の食生活はアミノ酸の摂りすぎくらい。
筋肉増強には禁じられているステロイド系の特殊医薬品やサプリメントを
使用していた選手が多かったといわれます。