1. ルビー・プリンセス号(Ruby Princess)事件とは
3月初めに日本で初となる新型コロナウィルスCOVID-19の大規模集団感染を
引き起こしたダイヤモンド・プリンセス号。
運航会社が、少し遅れた、ほぼ同時期に同様事件をオーストラリアで
発生させたことが報道されました。
事件の主役であり加害者となったルビー・プリンセス号はダイヤモンド・プリンセス号
と同じ13万トンを超える姉妹船。
グランド・クラス(Grand-class)の巨大クルーズ船です。
ルビー号ルビー・プリンセス号はシドニー港(オーストラリア)に寄港し、
乗員、乗客約3,500余名を下船させましたが、下船後に、そのうち約350人(推定)以上が
COVID-19検査に陽性反応を示したことが判明(600名との報道もあります)。
これまでに内11人(推定)が死亡したといわれています。
2. 寄港を強行したルビー・プリンセス号の虚偽申し立て
4月5日のシドニー(オーストラリア)発の報道によれば
ルビー・プリンセス号の運航会社はダイヤモンド号と同じ
カーニバル社(Carnival Corporation & PLC)の
子会社であるプリンセス・クルーズ社(Princess Cruises)。
3月19日にシドニーに到着しましたが、事前にCOVID-19感染者発生情報があり、
オーストラリア港湾の検疫所は同船の入港を拒否。
ところがカーニバル社側は様々な手段で政府、行政に感染者ゼロを主張し、結局は入港。
全員が新型コロナウィルスCOVID-19の検査をしましたが、船側は
下船時に体調不良を訴えていた乗客、乗員13人を除いては、
結果が出る前に乗員、乗客約3,000人以上を下船させたそうです。
カーニバル社は年商約2兆円、利益が約3,000億円を超える
世界一の巨大レジャー旅行会社であり、世界一の観光クルーズ船運航会社。
M&Aを続けて、クイーン・エリザベス、クイーン・マリーなどを所持していた
キュナード・ラインなど、世界の十指に余る観光クルージング会社を
傘下に収めており、各国の政官界に幅広い人脈を持ちます。
3. 法を無視するカーニバル社(Carnival Corporation & PLC)
オーストラリア側はルビー・プリンセス号の虚偽申し立てを
刑事事件として、捜査を開始。
責任を追及する姿勢を見せていますが、立件できて、捕らえれば
全てが解決するものではありません。
観光クルーズばかりでなく、貨物船、軍用船など大型船舶に共通する
国際問題として究明する必要があります。
カーニバル社は半世紀に及び多くの船舶運航会社と合併を繰り返し、
株主は多岐にわたります。
経営者がオーナーの会社と異なり、雇用された経営者たちは、多額の報酬を期待し、
目先の収益に固執しますから、日本とオーストラリアの事件は
起こるべくして起きた背景を持つのでしょう。
4. カーニバル社船舶が廃棄物を違法海上投棄
ダイヤモンド・プリンセス号が乗客を留めて横浜港に係留中。
度々東京湾の沖合に「ゴミ捨て」に離岸したことが報道されていました。
港からごく近いところでしたから、「ついに東京湾の根魚が食べられなくなった」と
国や神奈川県が、その行為を許すことが不思議でしたが、この船にとっては「いつものこと」
というより、この行為は**他の会社の船舶にも多かれ、少なかれあるのかもしれません。
海上では捨てて良いもの、悪いものがありますが、この船のオーナー会社は
ニューヨーク市の海域で廃棄物の違法投棄を繰り返し、市から告訴されています。
**日本の客用船舶が外洋に運航されていた1920年代に、
ヨーロッパ航路の最初の寄港地である中国の上海で目撃されていたのが
波止場近くでの残飯海上投棄。
乗客が上陸用のテンダー・ボートを待つ間、船体から大量の残飯が放出され、それを知っている
多数の上海住民が小舟で近接し、海に飛び込んでは食用に集めていたそうです。
心無い日本人の乗客が甲板より「投げ銭」をして、子供たちが海中でキャッチするのを楽しんで、
かなり批判されていたといわれます。
5. バハマ海域で不法投棄を続けたプリンセス社の所有船
カーニバル社の子会社プリンセス・クルーズはバハマ海域で残飯ばかりでなく
プラスチック、潤滑油などのごみ投棄を永年続けていたようです。
結局は環境破壊などでニューヨーク市(NYC)に告訴され、2017年に
約44億円の罰金を科せられたものの、執行猶予がついたために
内容物、量などが実態と異なる虚偽の報告書を作り、
不法投棄を続けていたそうです。
その不正が内部告発やNYC市民に暴露され、2019年6月に市が再度告発。
裁判により約22億円の罰金を科せられました。
カーニバル社はごみ廃棄の手間と経費を考えれば、海上投棄が
一番安い手段と考えているのかもしれません。
再犯の恐れ大とみられ、裁判では再犯の場合には
1日1.3億円から13億円の追徴を約束させられた、といわれています。
6. この事件を契機に株価は下がり続けています
ニューヨーク市の事件を契機にカーニバル社の株価が2017年以後は右肩さがり。
最近はピーク時の78㌦/株が10数ドル前後(*NYSE)で低迷しています。
2017年以後の業績低迷により不慣れな従業員が増えていることも想像でき、
二つのCOVID-19拡散事件は、経費節減が行き過ぎて衛生管理が甘くなっていたのかもしれません。
*NYSE :New York Stock Exchange