磨かれたパウアをバックにしたフラテイ(Flutey)夫妻のプロフィール
1.インバーカーギルのパウアシェル・ハウス
ニュージーランド南島南端のインバーカーギル(Invercargill)ブラフ町に
フラテイ夫婦(Mr and Mrs Flutey)の通称「パウアシェル・ハウス」があった。
パウアシェル・ハウスは数十年かけてパウア貝殻でデコレーションされた不思議な家。
貝類のコレクションとともに内外で評判が高くなり、夫妻はここを観光客に無料で公開(1963年)。
ここまで足を運んだ観光客のほとんどが訪れた人気コレクションだったという。
とはいってもインバーカーギルはオークランドから飛行機で2時間以上、
クライストチャーチからでも1時間半。
最短と思われるクイーンズタウンからでも1時間の遠隔地。観た人の積数は多くない。
インバーカーギル(Invercargill)は人口約5万人のサウスランド地方(Southland)最大の街。
イギリス人の入植地として旧い(ふるい)歴史があり、南極調査船、捕鯨船の母港として知られている。
パウア貝(Paua)に魅せられたフラテイ夫婦(Mr and Mrs Flutey)
2.パウア(paua)とブラフ牡蠣(Bluff oyster)で知られるBluff(ブラフ)町
インバーカーギルから27キロはなれたところに、Bluff(ブラフ)(ブルーフとの発音も)という
人口2000人に満たない小さな漁港の町がある。
南端の島のスチャートアイランド(スチュアートアイランド))(Stewart Island:南極に最も近い有人島)とは
フォルボー海峡(Foveaux Strait)を挟んだ対岸に位置する。
フォルボー海峡沿岸地域は冷涼な気候ゆえに、ニュージーランド特産の
あわび類パウア(paua)やブラフ牡蠣(Bluff oyster)の産地として有名。
パウアの殻は磨くと光沢のある美しい金属紋様が表れます。
下の写真のカリフォルニア、メキシコ沿岸産クジャクアワビ(英 名:Green abalone)
学 名:Nordotis fulgensまたはHaliotis fulgens と共に螺鈿(らでん)など工芸品に用いられます。
3.クライストチャーチのカンタベリー博物館に移転したパウアシェル・ハウス
(写真上)カンタベリー博物館に再現されたパウアシェルハウスのリビング.
このコレクション( Fred and Myrtle Flutey’s paua shell lounge)はオーナー夫妻が
2000年、2001年と相次いでなくなったことにより、2007年にブラフより
クライストチャーチのカンタベリー博物館(Canterbury Museum)に移転。
どこの国でもこのような個人のコレクションはオーナーが亡くなるまで、交通不便なところで
展示されていることが多いが、夫妻のケースはラウンジ(リビング)を飾って楽しんでいたコレクション。
夫妻の死後に不動産を売却し、パウア(paua)貝殻のデコレーションを
カンタベリー博物館に貸し出したのは何故か孫(10年間の契約?)。
詳しいことは不明だが、夫妻の娘たちに亀裂が入った。
孫が博物館と不明朗な金銭授受をした疑い(売却済み)を持ったのが原因のようで、
反対する娘は移転に対しては、観光資源を失うブラフの町民とともに猛反対。
結局、コレクションは2008年7月4日に南島最大の都市クライストチャーチの
カンタベリー博物館で移転披露された。
その後は多くの予想通り。半年で7万4千人と従前とは比べ物にならない数の来訪者があり、
関係者は例外なく「多くの人に見てもらうことができる場所に移転してほんとうに良かった」という。
パウアシェル・ハウスが移転した博物館が立地する公園
4.刺身が美味しいパウア(paua)
(写真上)
英名:blackfoot .学名:Haliotis iris. 肉質表面が真黒
和名: ヘリトリアワビ
パウア(paua:マオリ語)は日本産のクロアワビ、メガイのように
2種類あるが和名は一つ。
写真はブラックフットとよばれる肉質表面が黒い品種。
他に英名:yellowfoot.学名:Haliotis australisと命名された肉質表面が茶黄色の種がある。
繊細な香りがあり、バターソテーより、日本人には刺身が美味しいが、黒色をグロテスクと敬遠する人もいる。
産地では簡単に捕獲できるが、乱獲防止のために一人10個まで。大きさも120ミリ以下(ブラックフット)、
80ミリ以下(イエローフット)は捕獲できない。
価格はキロ5,000円以上(小売)と安くない(2010年)
5.パウアシェル・ハウスに展示されている夫妻収集のアワビ類
(写真上)夫妻が海岸で収集した石.大理石(石灰岩)が多い.
貝類に美を見出す人は同時に鉱物の美に惹かれる人が多い.
6.(参考)在りし日の英国聖公会聖堂(Christchurch Cathedral)
パウア・シェル・ハウスのある街、クライストチャーチの中心は英国聖公会教会
(Christchurch Cathedral :1864年建立).
邦人も大きな被害を受けた2011年の大地震で崩壊し、復旧計画は現時点で白紙.
ニュージーランドは日本同様に地震の多い国.首都オークランドの大地震が有名だが
第二の都市クライストチャーチも19世紀だけで4回の大地震に見舞われている.
歴史が浅い国ゆえ、欧米の教会のような重厚感は無いが、街のランドマークとも
なっていた建造物だけに破壊されたのは残念.
(写真上)聖歌隊席と左上はパイプオルガン
(しらす・さぶろう)
初版:2010年4月