「Resveratrol: A New Small Molecule Radioprotector.」
ブドウ・レスベラトロールといえば抗がん剤、抗ウィルス剤、抗炎症剤、
神経保護剤の開発が知られていますが、
ピッツバーグ大学医学部の科学者達がアセチル化したレスベラトロール(acetylated resveratrol)が
放射線被曝の害やテロによる放射線漏洩の危険を防ぐことを発見しました。
アセチル化(Acetylation)は体内で自然に行われてもいる反応で
有機化合物中の活性化した水素原子がアセチル基で置き換わること。
合成化学では必要機能を求めるために触媒を使用して意図的に置き換えたり、除いたりします。
発表されたのは2008年9月下旬にボストンで開催された
全米放射線がん治療協会の50周年記念年次総会
(the 50th Annual Meeting of American Society
for Therapeutic Radiology and Oncology :ASTRO)
放射線被曝の害を防ぐ小さな分子ブドウ・レスベラトロール科学者達をリードしたのは
ピッツバーク大学医学部放射線癌治療部門の教授であり
所長のグリーンバーグ博士
(Joel S Greenberge:professor and chairman of the Department of Radiation Oncology
at the University of Pittsburgh School of Medicine)。
コロンビア大学を卒業後、ハーバード大学で活躍した肺がん放射線治療の専門家です。
ピッツバーク大学の研究には日本人の小出和則博士らも中心的な枠割を果たしているといわれます
(Koide K Epperly MW Franicola D et al.)
ピッツバーク大学は米国厚生省が全米3000校のうち6番目の高額助成をする重点校。
2004年にはすでにブドウ由来の実験用合成レスベラトロールを製造していました。
これは長寿や生活習慣病の医薬品を開発しているサートリス社が開発ししている
合成ブドウ・レスベラトロールとは異なります。
実験はブドウ・レスベラトロールとアセチル化レスベラトロールを半分ずつマウスに投与。
(ブドウ・レスベラトロールとアセチル・レスベラトロールで養生したマウスの造血前駆細胞に
8段階の放射線0から8グレイ:gray Gyを1時間照射)
データ分析は放射線照射効果を見る線形モデル(直線-二次モデル、 一次-二次モデル:linear quadratic model)を使用。
放射線照射による細胞変化を調べましたが、照射前にブドウ・レスベラトロールで
養生した細胞は照射に抵抗性を示しました。
雌の特殊マウス(C57BL/6NHsd)を使用した他の実験では照射10分前に
ブドウ・レスベラトロールを腹腔内注射.
注射の場合はアセチル化レスベラトロール処置マウスの生存率が高くなりましたが、
未処理のレスベラトロール処置マウスは変化を示しませんでした。
結果的にアセチル化レスベラトロールの注射が照射前なら有効なことが判明。
ブドウ・レスベラトロールと放射線被曝の研究では同時期に
他のグループが行った実験でも大きな成果がありました。
2008年6月のカールステン(Carsten RE Bachand AM)らが
放射線影響学会誌(Jounal of Radiation Research Society)に
発表した研究によれば、マウスの体全体に放射線照射をする2日前に、
経口でブドウ・レスベラトロール(100mg/kg daily)を
服用したマウスのB細胞(骨髄免疫細胞)の
染色体異常頻度
(radiation-induced chromosome aberration frequencies in mouse bone marrow cells)を
調べたところ、染色体異常頻度の大幅な低下が認められたといわれます。
ピッツバーグ大学の研究者らは放射線テロに直面した場合に
ブドウ・レスベラトロールの天然物を摂取すると公言しています。
初版2011年06月24日