天然冬虫夏草は偽物が非常に多い.
この写真は生薬、食材市場の専門店.(広東省広州:中国)
1.米国の天仙液といわれたイミューン・アシスト事件
イミューン・アシスト(Immune Assist 24/7)は多種類のきのこから抽出した
多糖類(きのこの細胞壁などを構成するβグルカンなど)で作られたサプリメント。
各種のキノコ菌糸体のタンク培養健康食品のAHCC(Active Hexose Correlated Compound)や
香港などで売られるキノコエキス混合液「天仙液」に共通するところがありますが、
イミューン・アシストの価格は5分の1から10分の1。
悪性腫瘍、癌、エイズ、B,C型肝炎、鳥インフルエンザなどに著効を示すと表示し
販売されていましたが、米国食品医薬品局(FDA)から販売者に警告書が出され、多くの
使用者が当惑、混乱した事件(下記に解説)がありました。
消費者の関心が高そうな病名を羅列するのはいずこも同じ。
致死率の高いガンに「完治する、著効がある」との表示、暗示は多くの患者をひきつけますが
完治する実例がないだけに、日米ともに当局が最も神経を使う対象となっています。
下記「」内の効能書きはイミューン・アシストの宣伝に記載され、FDAがクレームを
付けたものです。
同じような違法な能書きの健康食品がいろいろありますが
イミューン・アシストの効能書きは、あたかも商品を予防、完治、治療、
症状緩和など医薬品と同等の表示するものであり、法に触れます。
その効果や安全性が立証されるものならば医薬品として認可されるべきものであり、
現段階では米国食品医薬品局(FDA)認証はできないというものです。
以下はノースウェスト・ボタニカル社のイミューン・アシスト(Immune Assist 24/7)を
構成する主な成分と、括弧内(かっこ)は同社が表示した効能.
FDAの警告後、販売は中止されましたが、現在はAloha Medicinals Productsが
商品名を継承して販売しています。
2.カワリハラタケ(アガリクス・ブラゼイ・ムリル:Agaricus blazei Murrill)
「ウィルスを防御し、抗腫瘍、抗癌効果がある。特に動脈硬化症に著効」
一般的にアガリクスと呼ばれたり、商標でヒメマツタケと呼ばれるものは同じです。
天然ではブラジル産が著名ですが、1978年には菌糸体培養による量産が可能となり、
安価で販売されるようになりました。
日本では藁をもつかむ末期がん患者に安い培養商品を法外な高値で売る業者が問題視
されていますが、大手会社の販売するアガリクスも発がん性物質や過酸化脂質が
含まれていると指摘され、消費者離れがおきた先例があります。
3.トウチュウカソウ(冬虫夏草:Cordyceps sinensis)
生薬、食材市場の専門店.(広東省広州:中国)
「呼吸器疾患、インポテンツ、免疫力低下の治療に使用されている。
中国では気管支炎、肺炎、結核に多数の治療実例がある」
天然冬虫夏草は昆虫などに寄生して生育するキノコ。
昨今は天然が少なく、菌糸体のタンク培養がほとんど。
天然冬虫夏草が乱獲で希少となり、珍重されていますが癌やEDに有効という実証はありません。
歴史が古い菌糸体培養は超高価な天然キノコに較べ安価に売られています。
4.マイタケ(舞茸)(Grifola frondosa)
5.シイタケ(椎茸)(Lentinus edodes)
「免疫力低下に関わるガン、エイズ、環境アレルギー、イースト菌感染、感冒、
風邪の医療に使用されている」
解説は省略。
6.レイシ(霊芝)(Ganoderma lucidum)
「ガン、エイズ、B型肝炎、ヘルペス、高血圧、糖尿病治療に効果がある」
中国人系生薬市場で最も人気が高いキノコが霊芝.日本名はマンネンタケ.
腐朽菌は種類が多く、日本のマンネンタケは珍しいものではありませんが、
中国系市場では高価.
7.カワラタケ(河原茸)(Coriolus versicolor)
「肺感染症に著効」
カワラタケ由来の医薬品がクレスチン(Krestin:PSK)
下記に解説があります。
8.イミューン・アシスト事件とは
約10年前の2006年の8月に米国の健康福祉省(HHS)の食品医薬品局(FDA)より
一通の内容証明警告書が出されました。
オレゴン州のノースウェスト・ボタニカル社(Northwest Botanicals,Inc.)が
販売するサプリメントのイミューン・アシスト(Immune-Assist 247™)が
連邦食品医薬品化粧品条例(the Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)に
たいして重大な侵害をする表示をしているというものです。
現在の米国では少なくなりましたが、中国(香港を含む)、韓国には
著名な「天仙液」、日本ではAHCCなど、イミューン・アシストと同様に複数の
キノコエキスを混合した健康食品が多数あります。
規制の甘い国では、これらが一様に「抗がん剤」として販売されています。
イミューン・アシストは1ヶ月分が当時で6千円程度でしたが、
日本や香港では数万円から10万円を超える商品も珍しくありません。
1994年に施行された条例以来、FDAが効能表示を認可したキノコ類健康食品の
薬学的効用はこれまでのところありません。
それ以前の健康食品素材では安全性を認めるにとどめています。
FDAはホームページ閲覧者の便宜のために市場に出回る多くのサプリメントの
個別解説をしていますが、それをFDA認可と宣伝する業者までいますから、
イミューン・アシストに神経質になるのも当然でしょう。
FDAの真意はがん治療効果が認められないサプリメントを高価格で
販売する業者を駆逐することでしょう。
日米の監督官庁(厚生労働省、米国健康福祉省など)が問題にするのは、
キノコ由来のサプリメントを悪性腫瘍や癌、エイズ、B、C型肝炎の貴重な
治療薬のように宣伝し、とびぬけた高価格(平均5-6万円/月)で
販売する業者が後を絶たないことです。
海外には日本のレンチナンやクレスチンが医薬品であることを引き合いに出して、
シイタケやカワラタケを原料にした健康食品を「癌の治療薬」として、または
それを(明確に)暗示して宣伝する業者が現在でも多数います。
10年くらい前までは日本でも癌の治療を謳うキノコ類販売業者に対して
同様な警告が厚生労働省より多数出されていました。
当時、癌に効くと謳われて高価だった天然アガリクスがバイオ合成で作られていたにかかわらず、
一か月分が78,000円くらいで売られていたのは有名な話。
9.保健効果が高いのは食用に売られている、ありふれたキノコ
キノコ類の保健食品としての効用は万人に認められているといっても
過言ではありませんが、
がん予防などの保健目的ならばスーパーや野菜市場のキノコ類の摂食で
目的が達せられるでしょう。、
ただし食生活上にビタミン、ミネラル、ポリフェノール摂取など、
いくつかの条件を満たす必要があります。
癌などの副作用軽減が目的ならば医薬品認可されたクレスチンなどが選
択肢でしょうが、これには医師の処方が必要です。
猪苓(ちょれい)、茯苓(ぶくりょう)、霊芝(れいし)、
冬虫夏草(とうちゅうかそう)などは
中国の伝統生薬ですが、これらも現在の中国の監督官庁が公認した
癌の完治報告は無いでしょう。
現在の医学ではあり得ません。