ハーバード公衆衛生大学院(Harvard School of Public Health:ボストン)のジェイソン・ウー博士らは魚油のシス型オメガ3サプリメントがヒト血流中のアディポネクチン:レベル(Adiponectin)を上げることを確認。
全米内分泌学会の月刊誌(The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism)6月号(2013年)に発表しました。
(The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism)
主題は
「Effect of Fish Oil on Circulating Adiponectin: A Systematic Review and
Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials」
長期間の人を対象とした研究では高いレベルのアディポネクチンがⅡ型糖脳病や心筋病のリスクを下げることを確認しています。
アディポネクチンは糖制御、炎症制御の代謝プロセスに役立つ有益ホルモン。
これまでも動物実験では魚油がアディポネクチンの循環を増加させることが解っていましたが、
同様の効果がヒトに対してあるかは不明でした。
博士らの調査研究手法はメタアナリシス(meta-analysis)。
これまで実施された大規模分析の中から、
信頼すべき二重盲検調査(ダブルブラインド)をランダムに14件選択。
この手法は学術会議、専門誌などで発表されている各種の調査、研究論文をテーマごとに精査して
研究の方向性、確度などを確認するものです。
研究者にはメタ解析、メタ分析とも呼ばれています。
選んだ14件の偽薬を使用する二重盲検調査の中から682件の天然魚油摂取、
641件の偽薬投与(オリーブ油やひまわり油)を選別して分析しました。
(魚油摂取グループは天然魚油由来サプリメント摂取者のみ。
バイオ合成EPA/DHAサプリメント摂取者は省いてあります)
その結果、魚油摂取グループの血中アディポネクチン濃度がミリリッターあたり
0.37μgまで増加しているのを確認。
ただし結果は魚油のサプリメント効果が14件の調査対象ごとにかなり異なっていることを
示しており、魚油のサプリメント投与はアディポネクチンに強い影響を与える集団と
効果の薄い集団があることがうかがわれました。
これからの研究課題はどんな人々に効果があるのか、さらなる論文の精査が必要とのことです。
ジェイソン・ウー博士は
「高いレベルのアディポネクチンがⅡ型糖脳病や心筋病のリスクを下げることが
判ったにかかわらず魚油が糖代謝や糖尿病進行にどのような作用機序を持つのかは
これだけの範囲の調査では結論できませんが我々の調査結果は魚油のサプリメント摂取が
ヒト血液中のアディポネクチン濃度の適応な増加をさせることを示唆しています。
それは魚油の消費が糖のコントロールと、肥満細胞代謝に有効な可能性を持つことを
示しています」
「作用機序が不明とはいえ魚油が代謝異常や心臓病へ効果があることは、
全米の成人の約37%、児童の31%が魚油サプリメントを摂取している
ことは疫学的立証とも言えます」と述べています。
初版:2013/10/25