米食品医薬品局(FDA)が部分水素添加した人造トランス脂肪酸(partially hydrogenated oils)を
含む加工食品の禁止に向けて動き出しました。
11月7日に報道された各紙の報道によれば
「米食品医薬品局(FDA)は禁止通達を官報(Federal Register)に掲載する準備をしている」
と伝えられています。
2003年にトランス脂肪酸の有害性が正式に認知されて10年。
食生活にあまりに広範囲に浸透しているために、各国では法令で直ちに禁止することが出来ませんでした。
米国厚生省傘下の食品医薬品局(FDA)では加工食品製造、外食などの産業界への禁止ショックを
和らげる方向性を探り、段階的な減少促進を要請していました。
今回明らかにされた食品医薬品局(FDA)の基本的考えは
「トランス脂肪酸は安全な食品とは認められない」「排除すべき」という内容。
ベースとなったのは
「10年間以上の調査研究により、信頼すべき科学的根拠と発見により確信を得た」から。
「当初の決定は食品添加物としての扱いとなるだろう」と連邦食品医薬品局の
マーガレット・ハンブルグ博士(Margaret Hamburug)はFDAの会議で述べています。
ハーバード公衆衛生大学院(the Harvard School of Public Health)の
ウォルター・ウィレット博士(Walter Willett MD)は
電子版医療情報誌(MedPage Today)の取材に対し
「決定は大歓迎。トランス酸が健康に多くの悪影響を持つことは、強力かつ大量の
科学的根拠に支えられている。」
「トランス酸は身の置き場所がなくなるでしょう。そしてこの新たなステップはアメリカ人の
食生活により安全をもたらします」と述べています。
「たとえ明確な禁止法案が無くともトランス酸の消費は最近減りつつあります。
なぜならば食品産業の一部では食品からトランス酸を減少させる
任意の努力が実っているからです」
「また一部の州などの規制によりレストランなども減少努力をしている」
「加えて、消費者はトランス酸が悪玉コレステロール(LDL cholesterol)を増やし
心筋梗塞のリスクを高めるなど、健康への悪影響を認識しつつある」
「FDAによればトランス脂肪酸の消費量は2003年の一日4.5gから2012年は1gにまで
減少しています」とウィレット博士は続けます。
「それにもかかわらずトランス脂肪酸を多く含む電子レンジポプコーン*や冷凍ピザなど
多くの食品はそのまま。まだまだ目を離せません」
「トランス脂肪酸にはどれだけなら安全という基準はありません。
トランス脂肪酸のカットが重要なのは糖尿病、肥満やその他の疾病を少しずつ減らすことにもなるから」
「食卓から完全に追放できれば、我々は改善しなければならないその他の食に
力を向けることが出来ます。おそらくこの動きは同様な改善を考えている
世界に波及効果をもたらします」
*アメリカでは映画館などで食されるポプコーンや、街中で売られる
ファーストフード冷凍ピザの有害性が社会問題化しています。
コロラド大学(デンバー市)の
ロバート・エッケル博士(Robert EclkelMD :the University of Colorado at Denver)は
電子版医療情報誌(MedPage Today)の取材に対し
「FDAの決定は適切なものです。、トランス酸のさらなる除去が公衆衛生にどの程度の効果を
もたらすかはまだ不明ですが、トランス酸を除去することは賢明なこと」
「たしかに10年前の4.5グラムから1gに減ったことで治療現場では医療効果が高くなっている。
トランス酸を禁ずることは現在施している治療をより効果あるものにするでしょう」と述べています。
また、心臓病の治療とケアで全米最大のクリーブランド・クリニック*の
デービッドフリッド博士(David Fried MD)も
「医者はトランス脂肪酸が禁じられることにより、現在投薬で得られている最高の結果が、
さらに高まることを期待しています」
「禁止法案は人々の体重コントロールにも影響を与えるでしょう。
そして医者は人々が現在食している多数の食品が何故有害なのかを知り、
自身で食から肥満を促進する原因を除ことで、正しい食生活をプランできるようになります」
と述べています。
*オハイオ州のクリーブランド・クリニック( Cleveland Clinic Foundation)は創立1921年.
全米トップ4にランクされる非営利法人の病院.
2800人の医師と研究者らが全米と世界100ヶ国から訪れる
年間320万人以上の患者を診ています.
FDAの最終的な発布(FDA issues)前に関連産業界、消費者などの利害関係者には
人造トランス脂肪酸(動物性は除外)除去の必要性に関して60日間の公聴機会が与えられます。
そこでは生産者が様々な種類の食品から除去するには、あとどのくらいの日数が必要かを探ります
(が、それによって発布を中止することは、まずありません)
「トランス脂肪酸はすでにまな板に乗せられた:
FDA Puts Trans Fat on the Chopping Block」という
刺激的な報道がありますが適切な表現でしょう。
FDAの食と獣医学担当(foods and veterinary medicine)の
ミカエル(マイケル)・テイラーFDA主席コミッショナー(Michael Taylor)によれば
「最終的に発布されれば部分水素添加された食用油は添加物と同様の扱いとなり、
安全がオーソライズされない限り、加工食品に使用できなくなります」
すでに2004年に政府に陳情書を出して禁止実現を促していた
消費者団体(The Center for Science in the Public Interest) は
歴史的に画期的な出来事と全面支持。
常務役員のマイケル・ヤコブソン(Michael Jacobson)氏は
「これからは毎年数千人規模の心臓病死減少が期待できるだろう。
FDAが政治的な判断をせず、科学的根拠のみで今回の決定をしたことは大きな前進」
とコメントしています。