脳神経新生に与える害を魚油が減少させることに関して
世界に180件以上の研究論文がありますが、
その論文を分析し証拠(エビデンス)を得ようと試みたのが
英国のリヴァプール大学老化循環器疾患研究所。
リヴァプール大学は創立1881年の国立大学。
イングランド北部リヴァプール市に立地します。
医学、薬学部門で数々の実績を上げていますが、
実践的な健康科学や生活科学(health and life sciences)で著名。
1.ジャンクフードが脳に与える悪影響を魚油が制御する
「Fish oil may stall effects of junk food on brain」
表題の調査報告はリヴァプール大学老化循環器疾患研究所
(Institute of Ageing and Chronic Disease University of Liverpool)の
研究者チームによるもの。
研究者らは「魚油が体重減少に重要な役割を果たすかどうか」の関連研究群には
「満足すべき証明データがあるか」を調査分析し、そのレビューを明らかにしました。
この研究は肥満の原因となるジャンクフードが脳にあたえる悪影響を、
魚油がどのようにして防ぐかをターゲットとしています。
研究者らが選択した10年間を超える、これまでの研究群は、いずれも高脂肪食が
神経新生細胞(新しい神経細胞を作る)を損傷させると指摘しています。
同時にオメガ3など魚油に富む食事が脳の、食欲、学習能力、記憶能力機能部分を刺激すること。
魚油が高脂肪食による負の効果を減じさせ、脳神経新生細胞を再生させるとの報告も185件ありました。
(魚油の機能には未解明部分が多々ありますが)魚の脂質が
直接その脳部分に機能するわけではない。
おそらく魚油の重要な役割は、脳神経作用に悪影響を与える一部の栄養素である
精製砂糖や飽和脂肪酸が食事によって吸収されるのを遅滞(stall)させることと思われる、
とは博士のコメント。
2.ジャンクフードと肥満:発ガン物質アクリルアミドの危険も
過剰肥満(obecity)を研究する学者たちは肥満を促進するメジャー食品群として
ジャンクフード(junk food)を挙げます。
ジャンクフードとは栄養素の少ないスナック菓子、清涼飲料などを指しますが、
飽和脂肪酸の過剰摂取、糖分、塩分の過剰摂取、トランス脂肪酸の摂取、
人工甘味料の過剰摂取、炭水化物の過剰摂取、アクリルアミドの過剰摂取など
様々な不健康要素が指摘されています。
幼児肥満を研究する学者が敵視するのもジャンクフードです。
ポテトチップスなど高熱処理炭水化物の発ガン性物質アクリルアミドも危険。
アクリルアミドの危険性が指摘されたのは10年以上前。
排除が難しく、現在も改善されておらず、厚生労働省の警告も継続されています。
高熱処理により多くの食品に発生する(おこげ、焼き過ぎ魚など)厄介な発ガン物質ですが、
ジャンクフードに多いのが特徴的です。
3.ルーシー・ピカヴァンス博士(Dr Lucy Pickavance)
チームの主任研究者はルーシー・ピカヴァンス博士(Dr Lucy Pickavance).
肥満と2型糖尿病の権威ワイルディング(John Wilding)教授が率いる
老化循環器疾患研究所の新鋭.
博士によれば
「体重は様々な要素に影響されます。
最も影響を与える重要要素は我々が消費する栄養素。
過剰な栄養摂取、特に精製糖、飽和脂肪酸は体重増加につながります。
ジャンクフードの飽和脂肪、精製砂糖が肥満を作り、代謝を阻害。
精神にも影響をあたえます。
肥満による変化は新たな細胞を作る能力低下を含めて脳の構造にも見られます。
おそらく肥満が脳の動作過程に影響をあたえ脳疾患に繋がるのでしょう。
研究では魚油が神経細胞の変化を修復、または予防して神経細胞(ニューロン)の
成長を刺激します。
我々はオメガ3が特別な脳作用過程を刺激して体重減を助けるとの論文に
証拠(エビデンス)があるかどうかを知りたかったのです。
研究論文では高脂肪食の後に通常は体組織に隠された善玉ホルモンが循環器に入り
神経細胞を護り、神経の成長を刺激しますが、それがトリグリセライド(グリセリンと同様)と
呼ばれる脂質の一つと炎症分子によって脳に入ることを妨げられてしまいます。
ジャンクフード愛用者は神経を成長させる細胞が減少していますが、
オメガ3が炎症細胞の生成を阻害し、トリグリセライドを抑制することにより
正常な機能を回復させます。
魚油そのものが肥満を抑止するわけではありませんが、高脂肪食が引き金となって
脳に与える悪影響におそらくブレーキをかけるのでしょう。
相対的な健康改善を望む人々にとって、青魚や魚油のサプリメント摂取は
あたかもカロリー抑制ダイエットに似て、積極的な前進となるでしょう」
調査研究における実験は動物によるもの。詳細は省略します。
実験にはオメガ3サプリメントも使用されています。
4.第20回ヨーロッパ肥満会議(European Congress on Obesity)
調査実験報告は英国栄養学ジャーナル(the British Journal of Nutrition)に掲載されます。
ルーシー・ピカヴァンス博士(Dr Lucy Pickavance)らは今月12日から15日まで(2013年5月)
リバープール・アリーナ・コンヴェンションセンターで開催される
第20回ヨーロッパ肥満会議(European Congress on Obesity)では
食事パターンごとに高脂肪食が与える効果と高飽和脂肪酸が筋肉組成に与える影響について
議論する予定だそうです。
下記は2013年にルーシー・ピカヴァンス博士らがレリースした論文。
「Effects of Dietary Fatty Acid Intake on Meal Pattern」
「Effects of Chronic Intake of Dietary Fatty Acids on Skeletal Muscle Fibre Composition in Rat」
「Neuroanatomical Survey of Central Glucose-Sensing Neurons in Diet-Induced Obesity.」
「Impact of Dietary Omega-3 Fatty Acids on Meal Pattern」
会議で議論される博士らの関心事は「脂肪食の影響度は摂食時の食材の組み合わせで異なる」
「魚油はどのような食材とともに摂食したら最大効果が得られるか」と推測できます。