日本では野菜、果実栽培の工場化を目指しての動きが広がっています。
経済効果が最優先されるからですが栄養面、安全面の配慮に対する
情報はあまりありません。
そんな風潮を良しとしない研究者がスペインの
エンカルナ・アグアヨ(Encarna Aguayo)カタルヘナ工業大学助教授.
文中のL-が無いシトルリンもすべてL-シトルリンのことです.
1.世界で問われる農産物の工業化と工場化の是否
ことところTPP対策として野菜など農産物を工場化するのが流行ですが、
生産の集約は当然としても工業化には消費者に説明していない欠点が多々あります。
日本では美味しさの追求、病害虫対策、歩留まり重視の生産性向上などを目的とした
工業化農産の研究が盛んですが、食品としての農産物に最も必要なのは栄養と安全。
食材は接着剤などの工業原料とは異なります。
畜産用の飼料でさえ間接的に人体に影響を及ぼします。
2.欧米の食品科学者は農産物の栄養素確保と安全性確保の重要性に注目
品種改良、遺伝子組み換え、ハウス栽培、無農薬、無化学肥料の有機栽培、水耕栽培などは
栄養面、安全面で未知、未明が多々ありますが、公開情報が不足しているのが現状。
検証途上または検証をせずに生産、販売が先行しています。
このトレンドを由々しきこととして様々な現実のケースを想定。
実践的研究情報を公開している欧米の研究所や学者が注目されていますが
8月14日に夏場のホットニュースとしてスイカのシトルリンが話題となりました。
3.食品科学の第一人者がスイカのL-シトルリンに注目
スイカのシトルリン(L-citrulline)に注目している研究者はスペイン南部の地中海に面した
カタルヘナ工業大学(リテクニカ・カルタヘナ大学:Universidad Politécnica de Cartagena)で
研究を続けるエンカルナ・アグアヨ(Encarna Aguayo)助教授。
アグアヨ助教授は栄養食材としての農産物を研究している世界のトップクラス研究者の一人。
風光明媚な地中海のカルタヘナはスペイン・ムルシア州の歴史ある港湾都市。
スペイン海軍の基地があります。
(?遺伝子操作などに関する生物多様性条約カルタヘナ議定書が制定された
のはコロンビアのカタルヘナです)
彼女の専門は食品科学、生物学。
食品関連の研究範囲の例をあげれば
カット野菜果物の時間経過による栄養素の損失
野菜果物の鮮度と栄養素を保つ手法。
カット野菜とカットしない野菜、果物の栄養素の違い。
露地野菜果物とハウス栽培、水耕栽培との栄養素の違い。
有機野菜果物の安産性(農薬の代わりに微生物を使うことの是否など)。
品種改良、遺伝子組み換えによる栄養素の損失または栄養素の強化。
栽培法によるカルシウム含有量の違い。
などなど生産、流通、調理、保存段階で想定できる栄養素増減のあらゆるケースに
実践的なアプローチをしています。
4.「スイカのL-シトルリンがアスリートの競技後の筋肉痛を和らげる:
Watermelon juice relieves post-exercise muscle soreness」
表題は2008年8月14日に発表され、世界の関係者で話題になっている研究論文。
これまでもシトルリン(L-citrulline)が筋肉痛を和らげることは競技者に知られており、
ヨーロッパでは研究も盛んですが、科学者はエル・シトルリン豊富なスイカジュースの
化学的な働きを見出すことはできませんでした。
おそらくアグアヨ助教授のチームがその探求に成功した最初の研究者。
アグアヨ助教授のチームはスイカジュースの抗酸化物質に関する過去の研究を調べ、
その筋肉蛋白増加作用の可能性とアスリートのパフォーマンス増強作用を検証。
実験方法詳細はご紹介できませんが
遊離アミノ酸エル・シトルリンが豊富な天然のスイカジュースとシトルリンが失われている
スイカジュースを比較テストしています。
実験では競技1時間前のボランティア-アスリートを2グループに分けてジュースを飲ませ、
競技後に効果を調べています。
スイカにはシトルリン以外の機能成分が含まれており、双方ともに効果がありましたが、
シトルリン含有ジュースが筋肉疲労により効果的なのが解明できたといわれます。
アグアヨ助教授のテーマでもある生産、流通、調理、貯蔵と栄養素の関連研究の
一端がうかがわれます。
研究報告は世界最大といわれる全米化学協会の会報
(Journal of Agricultural and Food Chemistry)で報告されました。