米国では厚生省が主体となって大学や研究機関とともに、健康に良いといわれる食品や
ビタミン、ミネラルの効能や安全性を大規模に調査、分析をしています。
10年以上の調査期間、数万人、10万人を超える動員は行政の資金的協力なくしては不可能。
うらやましい限りの保健体制です。
健康に関する政府管掌機関の多いボストンでは心筋梗塞に対するビタミンEの効果を
調べるのに9つの異なった大規模な分析研究(meta-analysis)が進行中。
その中の一つに、ビタミンEサプリメント(一般的なサプリメントは化学合成されたdlα-vitaminE)は
出血性脳卒中(hemorrhagic stroke)のリスクを高めるとの報告がありました。
研究は英国医療ジャーナル2010年11月号(British Medical Journal )に掲載。
この発見は「ビタミンEサプリメントの使用は我々が考えているように安全ではないこと、
少なくとも出血性脳卒中(hemorrhagic stroke)には、ある程度の害があることを示している」と
研究を主導したシュルク博士(ブリガムヤング大学婦人病院予防医薬品部
:Brigham and Women’s Hospital Division of Preventive Medicine)は指摘しています。
また、博士は「まだ判明したリスクは1250人に1人と小さいのですが、むやみに合成ビタミンEの
サプリメントを摂食する安易な習慣に警告したい」と加えています。
この研究を含めた9つの調査には118765人が参加し、半数が合成ビタミンEサプリメントを摂取。
残りは偽薬(プラセボ)です。
どの調査も心臓血管病の全てにビタミンEがリスクを高めるとの結果は出ていませんが、
少なくとも出血性脳卒中(hemorrhagic stroke)と虚血性脳卒中(ischemic stroke)の二つに
与える影響には明らかな差がありました。
虚血性脳卒中はビタミンEによって大体10%くらいの確率でリスクを回避できることも判明。
分析では合成ビタミンEサプリメントを飲んでいる45670人の参加者中884人が虚血性脳卒中を発症。
これと比較して偽薬(プラセボ)を飲んでいる45733人の内、983人が虚血性脳卒中(ischemic stroke)を発症。
この分析はビタミンEを飲んでいれば、476人に一人は予防できることを意味します。
反面、出血性脳卒中(hemorrhagic stroke)に関してはビタミンEを摂取している人が、
偽薬(プラセボ)の人の22%以上、出血性脳卒中の発症率が高いことが判明しました。
この分析ではビタミンEを飲んでいる50334人の参加者中、223人が出血性脳卒中を発症。
これに対し偽薬(プラセボ)の50414人の参加者中183人が出血性脳卒中を発症。
これは合成ビタミンEサプリメントの摂取によって1250人に1人のリスクが高まるということを意味します。
この研究はアスピリンの効能に近い結果という研究者もいます。
アスピリンは虚血性脳卒中(ischemic stroke)は減らすが
出血性脳卒中(hemorrhagic stroke)のリスクは高くなります。
シュルク博士の共同研究者クルス博士(Tobias Kurth MD)は
「研究では脳卒中にビタミンEの関与はそれほど大きくないが、この研究が物語るのは、
安易な合成ビタミンサプリメントの摂取は危険ということ。
健康維持にはタバコを吸わず、運動をして適正な体重を維持し、
バランスの取れた食事をすることをがベスト」と締めくくっています。
2010年11月12日に書かれた記事の復刻版.