細胞老化と癌(その12):健康寿命を延ばす若返り第6話:
ポテトチップス、フレンチフライ、コーヒーなどの
アクリルアミドの発がん性は脳神経や生殖機能にも障害
アクリルアミド(Acrylamide)の発がん性は先進各国関係者による国際会議の
危険性声明を受けて2002年10月31日に厚生労働省食品保健部が最初の警告.
研究の進展に伴い、2005年、2010年、2014年と複数回の警告がありましたが、
関連企業にしか理解されていなかった(伝わらなかった)ようです.
アクリルアミド(Acrylamide)を発生する食材、食品を取り扱う企業、
特に揚げたジャガイモを商品にしている企業や飲食業は10年間以上も対策を
練ってきましたが、その間一般消費者のほとんどに真相が伝わっていなかったのでしょう.
2016年2月の各社テレビ報道を観ると、解説するキャスターたち、街でインタビューを
受ける人たちは一様にアクリルアミドの限りなく黒に近い毒性を理解できていなく、
対応する知識がなかったのには驚かされました.
2018年3月末にはカリフォルニア州上級裁判所から異例の命令が下りました(第2項参照)
1.食品中に生成される有害物質のアクリルアミド(Acrylamide)
アクリルアミドはポテトチップスやフレンチフライに発生するだけではありません。
中国、タイ、ベトナムなど米作が盛んな国には米を原料として高温で揚げた料理が
沢山あります。
アジアの揚げ料理原料は魚のすり身か米かをチェックしてからお召し上がりください.
アクリルアミド発生が疑われる即席めんは中国、東南アジア諸国で、
すみずみという表現がピッタリといえるほど普及しています。
油を大量に使用する在来製法も多く、ファストフードとともに
健康被害は計り知れません。
(ベトナムのホテルルームに常備されているカップめん:ブランドは日本企業との合弁)
ポテトチップス、フライドポテト、ビスケットなど炭水化物を多く含む
食材を高温で加熱すると、アスパラギン酸とブドウ糖などが反応し、
劇物のアクリルアミドが生成されます。
このことが明らかになったのはストックホルム大学とスウェーデン食品庁の共同研究が
発表された2002年4月。(第4項に詳述)
工事用アクリルアミドの毒性に端を発した調査が進展するとともに
食品摂取によるアクリルアミド吸収があきらかになったことは衝撃的でした。
フレンチフライド・ポテトは世界的な調理法.
ケルン(ドイツ)の大衆レストランではソーセージと同等の
存在感(写真上).
この料理は加工肉の亜硝酸ナトリウム添加が加わり、
とびぬけた不健康食品といえます.
良質な油を選び170℃で揚げる自家製フレンチフライが最良の選択です.
「加工肉の亜硝酸ナトリウム」
2002年6月25日―27日にスイスのジュネーブにおいて
世界保健機関(WHO)は食品中のアクリルアミド に関する専門家会議を開催。
またFAO(国連食糧農業機関)/WHOの専門会議(JECFA)では「ヒトの食品からの
アクリルアミド摂取が、神経の形態変化や発がんを
引き起こす懸念がある」と評価し、「食品中のアクリルアミドを
低減するための取組みを継続すべきである」と発がん性や
神経毒性の懸念を発表しています。
宣言ともいえる共通認識は
「世界各国での研究が進み、毒性の実態がより明らかに
なるまでは、これらの食品を摂取することを、慎重にするべき」
魚油とオメガ3がジャンクフードで損傷した脳機能を回復させる:
リバープール大学老化循環器疾患研究所
2. コーヒー豆焙煎時にも発生するアクリルアミド
内閣府が2016年2月初めの食品安全委員会で議論し、発表したのは「食品に発生する
アクリルアミド(Acrylamide)が発がん性(ディーゼル排気ガスに匹敵)を持ち、
脳神経、生殖機能への障害の恐れがあること」でした。
2002年に海外で指摘された本命はポテトフライ、ポテトチップス.
しかしながらジャガイモ以外にも農水産物、畜産物のメジャーな食材には摂食量過多や
調理法を間違うと危険性が増す(だろう)食材は多々あります.
それにもかかわらず内閣府関係者が参加したテレビ報道ではレンコン、ゴボウなど
摂食量も、(アクリルアミド合成の原因となる)アスパラギン酸含有量も非常に少ない
マイナーな食材を採り上げて「アクリルアミドを避けていたら何も食べられなくなる」と
強調していたのには違和感を持った人が少なくなかったでしょう
2018年3月28日のロイター共同通信は米国カリフォルニア州内で販売される
コーヒー商品には「アクリルアミドの発がんリスクを警告するラベル」を
貼らねばならないとする判断が、*上級裁判所判事からくだされたことが
報じられました。
対象となるのはスターバックスなど約90社の外食産業。
「コーヒー豆の焙煎時に発生するアクリルアミドの量が健康を害さない」という立証が
関係者には出来なかった、というのがその根拠です。
*カリフォルニア州プロポジション65(Proposition 65:CA Prop 65)、
「1986年安全飲料水および有害物質施行法」
プロポジション65は化学発がん物質と先天異常または生殖障害を引き起こす
生殖毒性物質の2種類が対象
3.アクリルアミドの毒性は脳神経、生殖機能障害の原因にも
アクリルアミドは水に溶けないポリアクリルアミドを生成する性質が
土壌凝固や漏水防止に利用されます。
有用な反面、眼、皮膚、気道への刺激、中枢神経系への影響、
末梢神経の損傷、遺伝子損傷などの可能性がその毒性として知られています。
(アクリルアミドが神経系のタンパク質と結合することにより、神経毒性を示すためと考えられている)
これまでの実例では、土建業などアクリルアミドを吸収したり、
さらされていた人の神経障害や、雄の動物を用いた実験で、
生殖機能障害が報告されています(精子中のプロタミン・タンパク質と特異的に結合)。
アクリルアミドは日本では劇物に指定されています。
また、国際がん研究機関(IARC:International Agency for Research on Cancer)により、発ガンの可能性が高い2A項目に分類されています。
アクリルアミド以外で2Aに含まれるのはベンツピレン(魚の焦げ)、
クレオソート(木材の防腐、防虫剤)、ディーゼルエンジンの排気ガス等。
(注。分類項目は第4項目まであり、発ガン性を指摘している、
第1項目にはコールタール、アスベスト、噛みタバコ、カドミウム等が
列記されています)
4.環境汚染調査から食品汚染が発見されるまで
アクリルアミドの人体への毒性を疑ったのはスウェーデンが最初でした。
1997年に大規模なトンネル工事の内壁土止め充填剤に含まれる大量の
アクリルアミドが河川、地下水への流出し、魚が死んだり、牛の麻痺の原因物質と
判明してから。
工事関係者の追求健康調査をすると、作業員の多くがアクリルアミドを呼吸や皮膚から
大量に摂取・吸収していることが判明。
一部の人にアクリルアミドによる毒性としてよく知られている末梢神経の障害が
生じていることが明らかとなりました。
ただしこの調査はアクリルアミド毒性証明のきっかけにすぎませんでした。
汚染地ばかりでなく広範囲な周辺地域の食生活を調査していたスウェーデン食品庁(NFA)などの研究陣はその後3年間の研究によりある事実を発見しました、
5.厚生労働省食品保健部の考え方
2002年10月28日-30日には米国シカゴにおいて
アメリカ、カナダ、ノルウェー、イギリス、スイス、ドイツなど
各国の研究者などがシンポジュームを催し食品中のアクリルアミドの毒性と
代謝を始め、今後必要な諸事項を分析して、研究、検討の方向性を模索。
直後の2002年10月31日に厚生労働省食品保健部は、
「揚げ物や脂肪食の過度な摂取を控え、
炭水化物の多い食品を焼いたり、揚げたりする場合には
あまり長時間、高温で調理しないよう」国民に注意を喚起することにしました。
厚生労働省食品保健部はその後の2005年、2010年にも関連報告をしていますが、
食品産業への影響が大きいだけに奥歯に物が挟まっているような内容。
「平均的な摂取量では神経学的な影響はないと考えられるが、高摂取群では、動物を用いた
毒性試験でみられた神経の形態学的変化がヒトでも生じる可能性を排除できない」
そこは消費者が、「生産者を護らねばならない食品保健部の本意(現在は総理府)」を
くみ取るべきでしょう。
6.国立衛生研究所が調査した国内食品中のアクリルアミド量
国立衛生研究所はスウェーデン国立食品局(NFA)など先進諸外国のデータと比較した、
食品中のアクリルアミド含有量分析表を2002年に作りました。
当然のことながらデータは日本の現状と大きな差異はありませんでした。
大きな相違があるのはポテト、トウモロコシのチップです.
国立衛研 | 海外5カ国 | |
ポテトチップス | 467~3,544 | 170~2,287 |
フレンチフライ | 512~ 784 | <50~3,500 |
ビスケット、クラッカー | 53~ 302 | <30~3,200 |
朝食用シリアル | 113~ 122 | <30~1,346 |
とうもろこしチップス類 | 117~ 535 | 34~ 416 |
食パン、ロールパン | <9~ <30 | <30~ 162 |
チョコレートパウダー | 104~ 141 | <50~ 100 |
コーヒーパウダー | 151~ 231 | 170~ 230 |
ビール | <9 | <30 |
含有量の最大値と最小値(単位はμg/kg)
この表を作成した2002年当時は世界的に、問題発生から日が浅いために、各国ともに
分析サンプル数が少なく、結果のバラツキガ多いのが特徴。
この表は目安にしかなりませんが、
その後も大きな差異がないのか改訂はされていません。
カルビーなど大手の関連メーカーはアクリルアミド減少の工夫を
していますから、このデータより大幅に減少していると思われます.
初版: 2002年11月
改訂版:2005年12月
改訂版:2010年11月
改訂版:2014年09月
改訂版:2016年02月
改訂版:2018年04月