市場片隅のごく小さなスペースで花野菜世界チャンピオンのブロッコリーを売る生産者.
カリフラワー、ズッキーニ、カボチャを組み合わせで売る健康志向のセンス.流石です.
(ニャチャン:ベトナム)
旧フランス領インドシナの食文化(5):
花、蕾、果実は不思議な健康力を発信します。
その成長歴の全てが凝縮されているからなのでしょう。
アブラナ属のブロッコリー(Broccoli:Brassica oleracea var Italica)はつぼみの塊ですが、この蕾には非常に優れた体力増強の秘密があります。
ブロッコリーが世界的に健康野菜の王者に認定されたこともあり、最近は保健面から花食(エディブルフラワー)に関心が高まっています。
菜の花に代表されるアブラナ属(Brassica)は健康野菜最大のグループといわれ、ブロッコリーと並んで両雄といわれるキャベツの
ケール(Kale:またはBorecole:Brassica oleracea var. acephala)も同属。
しかしながら安全性の高い野菜として数百年の歴史を持つ花はそれほど多くありません。
野菜としての歴史のないマイナーな花をあえて食べるのは特別なマニア。
マニア向けには数多くのガイドブックも出版されています(巻末)が出版本に掲載されているからとて完璧ではありません。
未熟な個人的情報も多いようで、安全性に関しての信頼性は不明。
急性で死にいたる花はほとんどありませんが、遅行性の毒をもつ花は繰り返し食べてしまうことになります。
キノコ同様に正しい知識で判断しなければならないでしょう。
特に漢方、アーユルヴェーダ、欧米の医療ハーブに使用されるアルカロイド系成分を持つ植物は危険。
また未熟な知識で料理に使用するシェフや素材を販売する業者も増えていますから要注意です。
野菜としての歴史がない色々な花を食べたいならば、好奇心の範囲に限り、決して量を食べないこと。雄しべ、めしべは食べないこと(欧米マニア談)。
また野菜として栽培され、市場で流通する花以外は、農薬、殺虫剤、化学肥料に関しての配慮がありません。
装飾用、園芸用に売られている花を食べては危険といわれるゆえんです。
1. 鍋料理(ラウ)に美味しい花野菜:チャンピオンはスクウォッシュ
スクウォッシュを特注して海鮮鍋でボイル.
特注しなければこれほど大量のメニューはありません。
市場で売られるカボチャ(南瓜)の花
(東洋カボチャ: cucurbita moschata)(ホーチミン市)
スクウォシュ(スカッシュ:squash )と呼ばれ多くの国で食されている瓜類の花(カボチャも含みます)は
花野菜として永い歴史があります。
カボチャ、ズッキーニなどスクウォシュ栽培はベトナムの南部から中部のユエで盛ん。
カボチャの花は実をつけないオス花のみを食するため無駄がありません。
有用な果実を付けるメス花は食用可能ではあっても結実を期待されていますから
摘んでしまうことは少ないようです。
(*イタリアなどでズッキーニの花を食べたことのある方がカボチャの花を代用ということがありますが、
代用ではなく彼らには同じ扱いです)
(写真上)アジアのカボチャ(cucurbita moschata):左はチェンマイ(タイ)、右はジョホールバル(マレーシア)
日本で一般的に栽培されるカボチャは西洋カボチャ(cucurbita maxima)が主ですが
地域によっては東洋カボチャ(cucurbita moschata)や
ぺポカボチャ(ズッキーニ:zucchini、courgette:cucurbita pepo)も栽培されています。
2. ゴーヤとへちまはカボチャの親戚(ウリ科カボチャ属)
ベトナムはゴーヤとへちまの切手を販売しています。
インドがオリジンといわれても自国の特産と認識しているのでしょう。
いずれもスクウォッシュとして花食の対象ともなっている素材。
(切手写真左)Hoa muop dang(ムオップダン:Momordica charantia)
和名:ゴーヤ
英通称:bitter melon, bitter gourd bitter squash
(切手写真右)Hoa muop huong(ムゥホォン:Luffa cylindrica M.J.Roem)
英名:Smooth Luffa, Spongegourd, sponge Cucumber.
和名:へちま
(写真上)左からトカドヘチマ(Luffa acutangula)、ゴーヤ(Monmorudica charantin)、ボトル・ゴーヤ(bottle gourd 、 calabash).Opo Squash とも呼ばれ日本ではへちま(千成瓢箪:Lagenaria siceraria var).
タイではNam Tao.
右の写真はヘビウリ(Trichosanthes cucumerina).いずれもウリ(瓜)科:Cucurbitaceae
(ジョホールバル:マレーシア)
3. 幻のラウ・ホア:花鍋は料理本の世界
ベトナムの観光客向け料理本に紹介されている花鍋料理の具材.
花鍋(ラウ・ホア)を食べたいが、と聞かれることがあります。
料理本では花鍋と称していますが、あらかじめ特注でもしなければ、
メニューに載せているレストランは知る限りありません.
また伝統的な料理ではありません。
鍋料理(ラウ)の付け合わせ野菜の一つとしてバナナ、ハナニラ、スクウォッシュ、
シロゴチョウなどが1-2品盛り込まれることは珍しくありませんが、それを花鍋と称するのは無理でしょう。
上の写真はバナメイエビの左側から時計回りにバナナ、ハナニラ、スクウォッシュ、シロゴチョウ、トンキン・ジャスミン、ハス(ロータス)の花と花茎、フィッシュ・ボール.
いずれも野菜として永い歴史を持つ安全性の高いメジャーな花野菜です。
シロゴチョウの赤紫種が陰に見えますが、生産量がごく少なく一般的には好まれません。
料理本のサンプル写真は一緒盛りですが、各々の花野菜の味は繊細、かつ香りや性格が異なります。
マッチ(マリアージュ)するのかどうか疑問ですが、一つ鍋で同時に食するメニューは
菜食主義者、観光客対象のレストランでもまずありません.
やはり花鍋は「Display only」というべき飾りなのでしょう。
*料理本写真のハス(ロータス)の花と花茎の解説は
(写真上右)ヴェジタリアンが好むレベルの高いレストランがいくつもあるのがベトナム.
写真のレストランは観光客や富裕層対象(平均客単価2,000円くらい)だが現在の評価は高い.(ホーチミン3区)
(このサイトはレストランの推薦はいたしません.評価はあくまでも主観であり、シェフやオーナーが代われば味やサービス、料金が一変します。
またベトナムに限らないかもしれませんが、観光客が多い途上国の高級(自称)レストランは「素材偽称や従業員の釣銭ごまかし」など、トラブルが絶えないからです)